研究課題
ダウン症候群の新生児の約10%は一過性異常骨髄増殖症(TAM)という一過性の白血病を発症する。その多くは自然寛解するが、約20%の症例は4歳までに急性骨髄性白血病(ML-DS)に進展する。TAMのほぼ全例で血球特異的転写因子GATA1の遺伝子変異がみられ、この変異は短縮型のGATA1タンパク(GATA1s)のみが発現するという異常を引き起こす。我々は最近GATA1変異の特定のタイプを持つ症例で有意に血小板数が多く、ML-DSへの進展が少ない傾向にあることを見出した。これらの変異タイプはGATA1sタンパクの高発現を引き起こすことから、GATA1sタンパクの発現レベルの違いがTAMの臨床像に影響を与えている可能性が考えられる。ML-DS細胞株であるCMK11-5に、ドキシサイクリンで発現誘導可能な変異GATA1遺伝子を導入した。この細胞にGATA1sタンパクの発現を誘導したところ、巨核球関連遺伝子であるITGA2B、ITGB3、MPLの発現レベルの亢進がみられ、GATA1sタンパクの高発現が巨核球系への分化を促進する可能性が示唆された。次に、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いてCMK11-5のGATA1変異の改変を試みた。CMK11-5のGATA1変異は早期終始コドンを引き起こす変異(PTC)であるが、スプライシングの異常を引き起こす変異(SE)を導入したところ、複数のクローンが得られた。巨核球関連遺伝子の発現レベルを解析したところ、ITGA2B、ITGB3、GP5、GP9、MPLなど多くの巨核球関連遺伝子の発現レベルがSEタイプで高く、巨核球系への分化の促進が示唆された。ゲノム編集4日後にも同様の解析を行ったところ、ITGB3の発現レベルがSEタイプで高く、巨核球系への分化の促進が確認された。GATA1sタンパクの発現レベルはSEタイプで高い傾向にあった。
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