研究課題/領域番号 |
21K07793
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
佐野 史和 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (00622375)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | てんかん / アストロサイト / 苔状繊維 |
研究実績の概要 |
本研究の目的を達成するには、①てんかん性神経回路形成(苔状繊維異常発芽と再回帰性興奮性シナプス形成)時期を明らかにすること、②てんかん原生型アストロサイトとてんかん性神経回路形成の因果関係を解明することが必要となる。 前年度までに①に関する研究として、モデルマウスの苔状繊維異常発芽と再回帰性興奮性シナプス形成時期とてんかん発作閾値低下との時間的相関の解析を行い、ZnT3抗体 (苔状繊維の前シナプスマーカー)を用いた蛍光免疫組織染色法によって、苔状繊維異常発芽がけいれん重積発作誘発後、てんかん原生獲得までの間に、経時的に進行することを明らかにした。さらに、この苔状繊維異常発芽が、けいれん閾値を低下させることをピロカルピン誘発けいれん発作によるin vivo実験で明らかにした。すなわち、けいれん重積誘発28日後に苔状繊維異常発芽は進行し、この時期に、易けいれん性を獲得しており、苔状繊維異常発芽とけいれん閾値の低下に相関が認められることが明らかとなっていた。 今年度は②に関連して、てんかん原生型アストロサイトとてんかん性神経回路形成の因果関係を解明することを目的として、Ca2+活動依存的なナプス新生と関連が知られているGrm5に着目し、蛍光免疫組織染色法によってその活性化の時空間的特徴を解析した。その結果、けいれん重積誘発7日後から28日後にかけて、アストロサイトにおいてGrm5の発現が亢進することを明らかにした。また、次年度以降の研究に向けて、アストロサイト特異的Grm5cKOマウス(Glast-creERT2::floxGrm5)において、Grm5がノックアウトされていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に予定した、再回帰性興奮性シナプス形成時期の解明に関するPSD95の発現に関しては、技術的な問題で安定した結果が得られなかった。しかし、本年度に予定していた、てんかん原生型アストロサイトの機能解析(特にGrm5の活性化の時空間的特徴の解明)に関しては、当初の予定通りに進行した。また、次年度に向けてアストロサイト特異的Grm5cKOマウス(Glast-creERT2::floxGrm5)が実験に使用できる条件が整った(アストロサイトにおいてGrm5がノックアウトされること、繁殖が可能で実験に使用可能な匹数が揃いつつある)。
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今後の研究の推進方策 |
前述したように、苔状繊維異常発芽とけいれん閾値の低下に相関が認められた。また、(これまでの科研費課題で格にしてきた)次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析から得た複数の発現変動遺伝子について、Ca2+活動依存的なナプス新生と関連が知られているGrm5に着目し、蛍光免疫組織染色法によってその活性化の時空間的特徴を明らかにした。 今後は、この苔状繊維の異常発芽とてんかん原生型アストロサイトにおけるGrm5の活性化が因果関係を有しているのかについて、以下の実験を追加する。 まず、Grm5発現亢進がアストロサイトのCa2+興奮性に与える影響を、海馬急性スライス標本(ex vivo)を用いたCa2+イメージング法(アストロサイトの活動の指標)で評価する予定である。その後、アストロサイト特異的Grm5cKOマウスにおいて、アストロサイトの異常Ca2+興奮性が抑制され(Ca2+イメージング法)、結果として苔状繊維異常発芽と興奮性シナプス形成が抑制されるか(蛍光免疫組織染色法)、てんかん発作閾値低下を予防できるか(行動観察、脳波解析)について評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に、前回科研費課題の繰り越しがあったため、そちらの使用が優先された。研究は概ね計画にそって遂行されているため、今後は予定通り予算消化が出来ると思われる。
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