研究課題/領域番号 |
21K07795
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
八角 高裕 京都大学, 医学研究科, 准教授 (00511891)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プロテオミクス / 乾燥ろ紙血 / 原発性免疫不全症 / 新生児スクリーニング / 発症前診断 |
研究実績の概要 |
発性免疫不全症(PID)は、免疫関連遺伝子の異常により重篤な感染性や難治性炎症を来たす予後不良の疾患群である。根治療法として造血細胞移植が施行され遺伝子治療も模索されているが、重症例ほど乳児期早期に発症し、死亡したり後遺症を残す症例が多い。検査法の進歩により発症後の診断は迅速化しているが、それにより患者予後が大きく改善している訳では無い。一方、家系内の発端者と比較して、その後に出生し発症前診断された同胞症例の予後が格段に良い事はよく知られた事実である。以上より、PID患者の予後改善には新生児スクリーニングによる発症前診断が不可欠である。 本研究では、新生児PIDスクリーニングの確立に向け、発症前診断の臨床意義が高く、疾患責任蛋白質の発現低下により診断が可能な疾患を対象として、新生児の乾燥ろ紙血(DBS)検体から疾患責任蛋白質を同定・定量評価する手法の確立を試みている。加えて、将来的な発展に向けてPID以外の遺伝性疾患への応用も検討している。 令和4年度末までに、健常新生児・小児・成人、及びPIDを中心とする遺伝性疾患患者のDBS検体を200以上収集し、プロテオーム解析を行った。健常新生児と成人由来検体の比較を行ったところ、発現プロファイルにより両者が明確に区別され、直接測定による既報通り、新生児検体では成人検体と比較してAFPや胎児ヘモグロビンの発現が有意に高く、補体成分や免疫グロブリンJ鎖の発現が低いことが確認された。続いて、健常新生児検体と各PID疾患患者由来検体を比較したところ、疾患責任タンパク質の発現低下により診断可能な疾患に加え、表現型を反映する疾患特異的なタンパク質発現変動により診断が可能な疾患が多数存在することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有効性の証明に十分な数の検体が確保されると共に、有効性を示唆するデータが得られており、研究期間内の論文化が見込める状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度にはPIDに関する解析結果を論文化すると共に、PID以外の遺伝性疾患の解析を拡大する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題の採択前より検体収集を開始しており、研究開始時点で予想以上の検体収集が終了していた。追加検体の収集も効率よく行えたために多くの検体を一度に解析することが可能となった事に加え、同じ解析手法を用いた別プロジェクトとの同時進行が可能となったため、予定していた解析の一部を本課題以外の費用で賄う事が出来た。この為に繰越金が発生したが、令和5年度には当初の計画以上に検体数と対象疾患を拡大して解析を行う予定である。
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