研究課題/領域番号 |
21K07797
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
難波 範行 鳥取大学, 医学部, 教授 (10379076)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インスリン様成長因子-1 / ヒトiPS細胞 / 軟骨細胞 / 成長軟骨帯 |
研究実績の概要 |
小児内分泌診療における主訴として最多なのは成長障害である。成長の主因は成長軟骨帯の伸長であり、成長促進因子として最も古くから研究され、実際に臨床応用もされているのは、成長ホルモン(GH)/インスリン様成長因子-1(IGF-1)である。ところが、GH/IGF-1が成長軟骨においてどのような分子基盤を介して伸長作用を発揮するのか解明されていない。本研究では、ヒトiPS細胞を軟骨に分化誘導し、IGF-1受容体の下流の分子を網羅的に解析することで、IGF-1によるヒト成長軟骨伸長作用の分子基盤の解明を目指す。 本年度はヒトiPS細胞からヒト軟骨細胞を分化誘導する系を立ち上げ、最適化を試みた。具体的には、培養の簡便さからフィーダー細胞フリーの条件を検討した。当初は頻用されるlaminin 511-E8でプレートをコーティングしたが、軟骨への分化誘導効率が悪く、実用は困難と判断した。そこで、Yamashitaらの論文(STEM CELLS Transl Med. 2021)を参考に、プレートのコーテングをMatrigelに変更して分化誘導効率を検討中である。 軟骨への分化は、Safranin-O染色およびSOX9, ACAN, COL2A1, COL11A1のreal time PCRで検討した。 Matrigelでコーティングを行っても軟骨への分化誘導効率が不十分な場合はフィーダー細胞を使う系に変更する必要があるが、研究グループ内ではフィーダー細胞フリーのiPS細胞しか扱った経験がなく、系の変更のためには他施設での手技確認が必要であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトiPS細胞から軟骨への分化誘導が安定しないため、実験回数をこなせていない。分化誘導の安定を図るため、国内関連施設での手技確認等を施行したかったが、コロナ禍のため臨床業務が増加し、時間の確保が困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
Matrigelでコーティングしたプレートを用いることで、十分な軟骨細胞への分化誘導効率が得られる場合は、引き続きその系を用いて実験を継続・推進する。 Matrigelでコーティングしたプレートを用いても軟骨細胞への分化誘導効率が不十分であれば、フィーダー細胞を使う系に変更する必要があると考えられる。ただし、研究グループ内ではフィーダー細胞フリーのiPS細胞しか扱った経験がないため、国内関連施設での手技確認を行なって技術的な問題を確実にクリアしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会が全てweb開催となったため、旅費を使用しなかった。 ヒトiPS細胞から軟骨への分化誘導系の最適化に想定以上の時間がかかっていること、およびコロナ禍による臨床業務の増加のため実験回数を十分にこなせなかったことが相まって、予定していたRNA-Seq解析を施行することができず、RNA-Seq解析のために確保していた予算が残った。 本研究における解析手法の核を成すのがRNA-Seq解析である。最も予算が必要なのがRNA-Seq解析なので、実験条件を十分に検討した後にRNA-Seq解析を行いたいと考えている。一方、ヒトiPS細胞から軟骨への分化誘導系が安定すれば、直ちにRNA-Seq解析を施行する予定であり、翌年度の予算と合わせて十分なRNA-Seq解析を行いやすくなった(解析量・回数を増やすことも可能になった)と考える。
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