研究実績の概要 |
急性弛緩性脊髄炎は、本邦では2015年より報告され始めた新興感染症である。エンテロウイルスD68感染症との関連が示唆されているが、その根拠は、in vivo実験、感染症流行疫学、急性弛緩性脊髄炎患者の気道からの検出ウイルス等によるものであり、直接ヒト神経組織での感染証明はなされていない。 本研究では、急性弛緩性脊髄炎患者の遠隔期神経移行術時、末梢神経検体を用いて、メタゲノム次世代シーケンサー解析による網羅的ウイルス検出を行い、原因ウイルスを探索するとともに、副次的評価として病態解明の一助とするためトランスクリプトーム解析を行った。 ウイルス特異的配列として、2578種の RNA-dependent RNA polymerase、および、急性期に気道から検出されることのあるEnterovirus A71, D68, Coxsackievirus A4, A16を参照し、解析したところ、5例中4例でEnterovirus D68, A71, またはCoxsackievirus A4が検出された。これは麻痺残存側か健側(もしくは軽度麻痺側)か、その程度によらず検出された。一方、環境中のウイルスも多数検出され、病原体としての特定のため別の解析方法を検討中である。また、トランスクリプトーム解析によりパスウェイ解析を試みたが、完全な健側と患側の分離が難しく、比較対象と結果の解釈のために、さらなる解析が必要となった。
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