研究課題/領域番号 |
21K07804
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (50326328)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | FVIII / 血友病 / 遺伝子組み換え / 機能 / 結合 / 血友病マウス / 活性化 / インヒビター |
研究実績の概要 |
1.第Ⅷ因子-トロンビン制御から見た凝固・抗血栓薬開発の応用:トロンビンはFⅧのArg372, Arg740, Arg1689を開裂して活性化させる極めて重要な相互反応である。以前、FⅧのArg372, Arg1689を開裂活性化させるトロンビンのFⅧ上結合領域(346-349残基、1680-1684残基)を同定した。今回、A1酸性領域のトロンビン結合部位を含む領域をヒルジン配列に全置換したトロンビン高親和結合第Ⅷ因子蛋白(MKNNEEAEDY337-346GDFEEIPEEY)の作製に成功した。残基346-349含有領域のヒルジン置換蛋白において結合反応は野生株の約1.8倍増強していた。トロンビンの第Ⅷ因子活性化の増強効果(野生株の約1.5倍)を認め、R372開裂も開裂速度(約2.5倍増強)も増していた。 2.活性化第Ⅷ因子の活性安定性から見た凝固・抗血栓薬開発の応用:高活性機能型凝固FⅧの作製: FⅧa-FⅨa結合親和性を高め、内因性FX複合体活性のkcatを増強させる変異体の作製に成功した。本変異体はFⅧの安定性を保ち、FⅧaからのA2ドメインの解離を遅延させることにより、野生株に比してFⅧの凝固機能を2倍程度高め、F8KOマウスにおける尾切断出血性モデルにおいて止血効果を野生株の4倍近く高い凝固ポテンシャルを示した。 3.インヒビター結合親和性のアプローチからみた凝固薬開発の応用: インヒビターに対する高機能FⅧ蛋白の作製: インヒビターの主要エピトープのA2またはC2ドメインを認識したインヒビター出現時でさえFⅧ機能を発揮するporcine-hybrid変異FⅧ蛋白を作製に成功した。インヒビター反応性をin vitro実験(血漿、全血)にて減弱させ、インヒビター存在下で凝固能を持続することを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実験計画について、高機能獲得型第VIII因子蛋白はどのパートも順調よく作成できており、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで当初計画した実験計画を概ね順調に進めており、引き続き念じ計画に従って、研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は前年度からの研究のさらなる発展(以前作成していた変異体を含む遺伝子組み換え蛋白発現や精製が主であった)の研究が主であったために、新規機能獲得型FVIII変異蛋白作成などにおける費用(直接経費)は使用することなく研究を実行することができた。しかし、次年度からは血友病Aマウスを使ったin vivo研究や新規の多くの蛋白作成、構造機能解析や発現実験が中心に多くの展開することが考えられ、次年度繰越の分と翌年度の請求の合わせた分の助成金の使用が当初の計画通りに大いに見込まれる予定である。
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