研究実績の概要 |
1.第Ⅷ因子-トロンビン制御から見た凝固・抗血栓薬開発の応用: トロンビンはFⅧのR372, R740, R1689を開裂して活性化させる極めて重要な反応系である。我々はFⅧのK1693N変異がその近傍のR1689開裂を抑制し、その結果、FⅧ活性化障害をきたすFⅧ分子異常症を報告した(日本血液学会総会2022)。P4’領域でトロンビン開裂に影響を及ぼす理由として、N変異が開裂領域に間接的な構造変化をもたらしたと推測するが、今までP4’変異でのトロンビン開裂異常の報告はなく、この変異体蛋白の構造機能を解析し、FⅧ開裂促進・抑制機序のより詳細な解明を現在行っている。
2.活性化第Ⅷ因子の活性安定性から見た凝固・抗血栓薬開発の応用: 高活性機能型FⅧの応用: FⅧa-FⅨa結合親和性を高め、内因性FX複合体活性を増強させる変異体の作製に成功した。本変異体はFⅧの安定性を保ち、活性化FⅧからのA2ドメイン解離を遅延させ、野生株に比してFⅧの凝固機能を2倍程度高め、F8KOマウスにおける尾切断出血モデルにおいて止血効果が野生株の4倍近い高凝固能を示した。最終報告論文は国際雑誌(Blood Advances,2023)に掲載された。
3.インヒビター結合親和性のアプローチからみた凝固薬開発の応用: インヒビターに対する高機能FⅧ蛋白の応用: インヒビターの主要エピトープ(A2,C2ドメイン)認識インヒビターの出現時でさえFⅧ機能を発揮するporcine-hybrid変異FⅧ蛋白の作製に成功し、インヒビター反応性をin vitro実験(血漿、全血)にて減弱させ、インヒビター存在下で凝固能を持続することがわかった。本結果を米国血液学会2022で発表した。F8KOマウスを用いたin vivo評価も現在、実施しているところである。
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