研究実績の概要 |
ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は小児に好発する最も頻度が高い血液悪性腫瘍で、骨髄、肝臓、脾臓など網内系臓器はリスク臓器と呼ばれ再発頻度が高い。このようなリスク臓器陽性多臓器型LCHにおいては、BRAFV600E遺伝子変異陽性が高頻度に認められる。我々は、LCHにおける骨髄病変に注目し、初診時の骨髄血を用いてBRAFV600E遺伝子変異の定量的解析を行ったところ、低年齢や多臓器型など、従来から臨床的に知られている高リスク症例の特徴に一致した。続いて、初診時の骨髄BRAFV600E遺伝子変異が陽性群では陰性群に比較し、再発率が有意に高いことを見いだした。加えて、治療中の骨髄血中の遺伝子変異は化学療法中も持続的に検出されたため、骨髄血におけるBRAFV600E変異定量解析は測定可能残存病変として治療反応性や予後と相関することが示唆され、新知見として論文報告した。(Kudo K, et al. Haematologica. 2022;107(7):1719.) 続いて、骨髄血中のBRAF遺伝子変異陽性細胞はどの分画に多く存在するかについて調べ、CD34陽性細胞を磁気ビーズ法で濃縮し、遺伝子変異解析を行ったころ、 臨床的高リスク症例では、CD34陽性細胞分画に遺伝子変異陽性細胞がより多く含まれていたことから、乳児の好発する多臓器型の重症LCHにおいては、造血幹細胞ないし単球貪食細胞系列の前駆細胞が本疾患の起源に相当する可能性が示唆された。 さらには、高リスクLCHの起源細胞と考えられる骨髄BRAFV600E陽性細胞が、どのような機序で治療中も骨髄で生存を維持し、再発を引き起こすのかは不明である。そこで我々は、小児LCH24例で骨髄BRAFV600E変異量により3群に分類し、網羅的遺伝子発現差解析を行い、骨髄での生存優位性に関連する可能性のある6つの遺伝子を抽出した(未発表)。
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