研究課題/領域番号 |
21K07817
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
三谷 義英 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (60273380)
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研究分担者 |
丸山 一男 鈴鹿医療科学大学, 医学系研究科, 教授 (20181828)
西村 有平 三重大学, 医学系研究科, 教授 (30303720)
澤田 博文 三重大学, 医学系研究科, 講師 (30362354)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肺動脈性肺高血圧 / エピゲノム / 周産期刺激 / MCP1 / 炎症 / ゲノム編集 / 動物モデル / 肺動脈平滑筋 |
研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧 (PAH)は、原因不明の予後不良な肺血管閉塞性病変を伴う肺高血圧であり、 新規の治療法と予防法の開発には病態解明が重要である。小児の 肺高血圧の1/3は、出生前・後の周産期侵襲が関与する事、周産期侵襲で生じる新生児肺高血圧の既往が、成人期の肺高血圧の発症に繋がった例が報告され注目されるが、周産期侵襲が思春期・成人期のPAHの発症に関わるかは、今後の課題である。これは、1新生児医療の進歩による成人移行例の増加、2周産期の介入の個別化予防の可能性、3エビゲノム変化の受攻期としての周産期の3点から重要である。最近、周産期低酸素によるPAHラットモデルの肺血管病変の増悪と培 養肺動脈平滑筋細胞の増殖・炎症活性の亢進とそれに関わる機能分子のエピゲノム変化、サイトカイン産生亢進を見出した。 本研究の目的は、1周産期低酸素 暴露PAHラットモデルの機能分子の遺伝子欠損の生体レベルの効果の検討、2機能分子と肺動脈平滑筋細胞の増殖・炎症活性の細胞内経路の解明である。 以上か ら、本研究は、肺循環のBarker仮説の検証研究であり、思春期・成人期のPAHの予防、治療に資する事が、本研究の全体目標である。 研究計画、1ゲノム編集技術を用いたMCP1受容体のCCR2遺伝子欠損の実験的PAHモデルの影響の評価。 2CCL2刺激下の網羅的発現解析を用いて、培養細胞でのCCR2の作用、増殖、炎症活性の細胞内シグナル伝達の解明。3炎症性肺高血圧モデル(モノクロタリン刺激)において、in vivo, invitroの効果を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ヒトPAH類似ラットモデルの作成。7週齢雄ラットにSugen 5416 (20mg/kg,1回皮下注)(Sigma)を投与後、1/2気圧(380 mmHg, 10%酸素)21日間の低酸素暴露刺激 を加える。評価病日で心カテ、組織採取を行う。2.周産期低酸素暴露。胎生14日から生後3日まで、妊婦と新生児の14%低酸素暴露を行う。3.CRISPR/Cas9システ ムを用いた遺伝子改変ラットの作成CCR2欠損ラットは、東京大学動物実験施設で研究協力者真下知士博士により作成され、既に三重大学動物実験施設で飼育されている。4.肺高血圧の評価。評価日に小動物用心エコー検査装置を用いて左室変形、肺動脈ドップラーを評価し、内頸静脈からの心臓カテーテル検査により右室圧、大動脈圧を測定する。右室肥大を重量比により評価する。5.組織の分子生物学的、免疫組織学的評価。 評価後、気管切開、小動物用人工呼吸器を用いて人工呼吸下で開胸し、肺凍結サンプル、還流固 定肺を作成する。肺組織の定量的評価、免疫組織学的評価(DAB染色、共焦点レーザー顕微鏡を用いた評価)、分子生物学的評価を行う。6.血管平滑筋培養と増殖活性、炎症活性の判定。肺動脈中枢部、分枝部を実体顕微鏡下 で採取し、内膜、外膜を除去、1mm3の小切片を作成。D- MEM/F12、10%ウシ血清下で培養し(備品のCO2 Incubator)、2-5継代の培養細胞を準備する。 PDGF-BB刺激による増殖性をCCK8アッセイ、TNF-αによる炎症活性をrealtime PCRで評価する。 1.ゲノム編集技術を用いたMCP1受容体のCCR2遺伝子欠損の実験的PAHモデルの影響の評価、CCL2刺激下の網羅的発現解析を用いて、培養細胞でのCCLの作用、増殖、炎症活性の細胞内シグナル伝達の解明。特に、CCL2は、肺動脈平滑筋の増殖低下、脱文化抑制効果が認められた。肺動脈平滑筋網羅的解析の網羅的解析によりMyh11, Cnn1, Acta2, Tagln, and Myocdの発現の脱文抑制に関連した変化を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
1.ゲノム編集技術を用いたMCP1受容体のCCR2遺伝子欠損の実験的PAHモデルの影響の評価。周産期低酸素は、胎生14日から生後3日まで14%低酸素暴露を行う。雄の7週齢SDラットに、Sugen投与とその後3週間の低酸素暴露で作成したSuHxラットを、15週齢の時点で、心エコーによる循環評価、心臓カテーテル検査による右室圧、大動脈圧測定後、屠殺し、組織採取を行う。 CCR2遺伝子欠損の有無、周産期低酸素暴露後SuHxの有無の4群で評価と生存率評価を行う。組織採取では、定量的病変評価、免疫染色、realtime PCR、western blotを行う。 2.siRNA、In Silico解析、刺激下の網羅的発現解析を用い て、培養細胞でのPDCLの作用、増殖、炎症活性の細胞内シグナル伝達の解明 7週齢ラットから、実体顕微鏡下で肺内肺動脈の摘出し、内膜、外膜を除去し、小切片を作成。継代培養を行い、PDGF-BBによる増殖刺激、TNF-αによる炎症刺激により遺伝子発現を評価する。培養細胞の刺激後のPDCL遺伝子のsiRNAによる抑制、網羅的遺伝子発現解析、In silicoのpathway 解析、realtime PCR、western blotを行う。炎症性肺高血圧モデル(モノクロタリン刺激)においても、同様の効果を認めつつあり、in vivoおよび肺動脈平滑筋を用いた実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
網羅的発現解析を予定しているが、その準備実験に時間を要し、その実施が、2022年度から2023年度に変更された為。
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