in vivoの実験系として、前年度までに確立した「牛乳と塩酸の混合物による経気道感作モデル」の病態解析を進めた。このモデルは我々が初めて確立したもので、病態解明のため、抗原単回投与後3時間のマウス肺に対して、シンクルセルRNA-seq解析を行った。 前年度はシングルセルRNA-seq解析のデータを我々の研究グループで解析し、肺胞マクロファージを含む細胞集団でTLR7の関与を疑った。今年度は、その膨大なデータをより系統立てて詳細に解析するため、コンサルティングによる外部委託での解析を行った。 解析結果により19細胞集団を同定し、牛乳と塩酸の混合物の気道投与により、肺胞マクロファージが最も発現変動遺伝子が多い細胞集団であることを明らかにした。TLR7を含むパターン認識受容体の解析では、肺胞マクロファージと単球でTLR7の発言を認めたが刺激による変動は少なく、最も変動が大きかったのは肺胞マクロファージに発現するTLR4であった。 TLR4の病態への関与が示唆されたため、TLR4ノックアウトを用いて本モデルの解析を行ったところ、モデルに誘導されるアナフィラキシーはTLR4依存的であることが明らかになった。 全研究機関にわたって、仮説通りの実験結果が得られずに研究計画の変更を必要としたが、結果的にはこれまでにない概念の牛乳アレルギーモデルマウスの確立、その病態にTLR4が関与すること、などの重要な科学的知見を得ることができた。本研究期間中に一定の成果がまとまったため、その成果を論文投稿中である。
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