研究課題
新生児の後遺症なき生存を阻む大きな壁は脳障害である。近年、低体温療法は新生児低酸素性虚血脳症(HIE)における治療法として確立した。しかし、その効果は限定的であり、低体温療法を強力に補完または新たな治療法の確立は喫緊の課題である。申請者らはこれまでに、細胞培養において低体温療法の脳保護効果はグリアが分泌するエリスロポエチン(EPO)を介し、さらにEPOの発現調節にAMP-activated protein kinase が関与することを明らかにした。これらの研究成果を発展させ、本研究ではグリアを用いた基礎研究で、低体温療法の脳保護メカニズムのさらなる解明、新規補完治療法の開発を行った。さらにグリアの機能を制御することで、成熟児におけるHIEのみならず、低体温療法が施行困難な未熟児の脳室周囲白質軟化症(PVL)も含めた包括的な新生児脳障害の治療成績を向上させることを目指し研究を行った。HIEモデルラット、PVLモデルラットにおいてもAMP-activated protein kinase 介した、内因性EPOの発現が脳障害を抑制することが明らかになった。また神経炎症に主として関与している、ミクログリアにおいては、TRPV4-AMPK-NFkBを介しての神経炎症抑制により神経保護効果を発揮することを発揮することを明らかにした。本研究成果によって、HIEの治療成績の向上、補完する新規治療法の開発につながると考えた。さらにこのメカニズムの解明により、低体温状態にすることが困難でその治療法がない未熟児のPVLの治療にも応用できると考えた。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Neurochem Res.
巻: 49 ページ: 800-813
10.1007/s11064-023-04075-8
Exp Cell Res
巻: 432 ページ: 113784
10.1016/j.yexcr.2023.113784.