研究課題/領域番号 |
21K07834
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
桑原 絵里加 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 小児慢性特定疾病情報室, (非)研究員 (80713164)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性疾患 / 小児 / 死亡率 / 推移 |
研究実績の概要 |
本研究は、長期生存が可能となった小児の慢性疾患の状況変化の分析により、自立のために必要な支援体制の根拠を明らかにするものである。研究の目的は、1.慢性疾患を有する子どもの死亡率の算出方法を確立すること、2.慢性疾患を有する子どもの死亡率の変遷を明らかにすること、3.死亡率の改善した疾患における臨床状況の変化の分析により、必要な支援を明らかにすることの3点である。 本年度は、主に目的1、2を中心に研究を行った。まず、ICDコードで分類されている人口動態統計の死因より、海外の文献と我が国の実情を鑑みて、慢性疾患と一般的に認識される疾患を同定、抽出した。過去50年分のデータを、死因別に、0-19歳を5歳刻みの年齢階級別にし、算出した年齢調整死亡率の推移を分析した。50年の間に診断技術の向上や病態の解明が進歩し、診断のつかなかった疾患がつくようになったなどの変化がみられ、単純に50年分を比較することはできないものの、全体の推移を把握することは可能であった。 更に、小児慢性特定疾病対策による16の疾患群分野に再分類して、死亡率の推移を比較した。過去の研究で、0歳児での死亡と1歳以降の死亡を分けて計算している文献もあり、同様に1歳以降の死亡率を算出することも行った。その結果、一部の疾患を除き、ほぼ全ての疾患分野で死亡率は改善していた。特に喘息や先天性心疾患による死亡率改善が顕著であることが明らかとなった。 これらの結果より、研究目的3の、死亡率の改善した疾患における臨床状況の変化の分析は、心疾患を中心に行うことを予定することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、3か年の研究期間において、以下の3点を行うことを予定している。1.慢性疾患を有する子どもの死亡率の算出方法を確立すること、2.慢性疾患を有する子どもの死亡率の変遷を明らかにすること、3.死亡率の改善した疾患における臨床状況の変化の分析により、必要な支援を明らかにすること。 このうち、初年度で1,2を行った。50年分のデータの構造を並べることで、慢性疾患による小児の死亡率の変遷の比較が可能な範囲が明らかとなった。その上で、疾患群別に死亡率の推移を分析し、著明に改善した疾患を明らかにすることができた。これらの結果をもとに、今年度は、研究目的3の、死亡率の改善した疾患における臨床状況の変化の分析を進めることとした。具体的には、心疾患を中心に分析することまで決定した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、研究目的の3、すなわち死亡率の改善した疾患における臨床状況の変化の分析を主に行いたい。さらに、2について、50年の間に疾患ICDコードの変更や、診断技術の向上などから、遡るにつれ疾患名の細分化が困難であることが判明したため、ICD10を利用している期間に絞って詳細な疾患名に分けての死亡率算出を試みたい。現在、厚生労働省より提供される詳細なデータを入手した段階であり、本年度、細分類化した死因による死亡率の推移を算出する予定である。 3の、死亡率の改善した疾患における臨床状況の変化の分析では小児慢性特定疾病の医療意見書情報を利用し、慢性心疾患患児の電子化データより、クリーニングおよび治療状況や疾病の状態についての分析を開始する。当初、データを個々に連結し、縦断的な分析も計画していたが、これまでの予備的な解析で、縦断的な分析は2,3年分に限られることが分かってきており、横断的分析を各年度で行い、集団としての比較が主となることを予測している。 得られた慢性疾患の死亡率の変遷は、その具体的な手法とともに論文化したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
小児科学会や関連学会へ参加するための旅費を計上していたが、コロナ禍でオンライン参加が可能となり、交通機関の利用がなかったため。
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