研究課題/領域番号 |
21K07835
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所) |
研究代表者 |
道上 敏美 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 骨発育疾患研究部門, 部長 (00301804)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リン代謝 / X連鎖性低リン血症性くる病 / PHEX / 骨芽細胞 / 骨細胞 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
遺伝性低リン血症の中で最も頻度が高いX連鎖性低リン血症性くる病(XLH)は、エンドペプチダーゼに類似した構造を有するPHEX遺伝子の機能喪失に基づく。XLHにおいては、骨芽細胞/骨細胞からのFGF23過剰産生により尿中リン酸排泄増加、低リン血症、ビタミンD活性化障害をきたすが、FGF23はPHEXの生理的な基質ではなく、XLHの病態には不明な点が多く残されている。そこで、本研究においては、PHEX欠損ヒトiPS細胞モデル及びマウスモデルを用いて、XLHの病態形成における新たな分子機構を解明することを目的とした。健常男性由来のヒトiPS細胞株にCRIPSR/Cas9によるゲノム編集を適用し、PHEX欠損iPS細胞を樹立し、遺伝的に同質 (isogenic) な親株をコントロールとして、骨芽細胞/骨細胞系列に分化誘導して解析した。βグリセロリン酸を含む骨芽細胞系列への分化培地を用いて49日間培養したところ、いずれの細胞においてもRUNX2の発現はDay28にピークを示した。FGF23の産生はPHEX欠損 iPS細胞で増加していた。興味深いことにPHEX欠損 iPS細胞においては石灰化が亢進しており、腎臓との相互作用が排除されリン供給が充分なin vitro条件下においては、PHEX欠損は石灰化を促進しうることが示唆された。培養上清中のピロリン酸とATPはPHEX欠損 iPS細胞で増加しており、アルカリホスファターゼの活性低下と関連していた。ANKやENPP1の発現には差はなかった。一方、PHEX欠損 iPS細胞においてはDMP1、osteopontin、RUNX2、FGFR1、EGR1など様々な分子の発現が増強しており、これらの結果はXLHのマウスモデルであるHypマウスの骨芽細胞/骨細胞での解析結果と一致していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PHEX欠損iPS細胞で認められたin vitro石灰化の亢進は、XLHで見られる異所性骨化を想起させる。また、PHEX欠損iPS細胞においては、FGF23の産生増加に加えて、DMP1やosteopontinなどのSIBLINGsファミリー蛋白質の発現増加やFGFRシグナルの活性化、細胞外ピロリン酸やATPの増加など複合的な異常が存在することが明らかとなった。これらの変化はHypマウスでの知見と一致しており、XLH病態形成への関与が示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
PHEX欠損iPS細胞で認められた種々の分子の発現変化について、病的意義を検討する。また、XLHにおいては骨芽細胞/骨細胞のリン感知機構に異常が生じている可能性があるので、樹立したPHEX欠損iPS細胞とコントロール細胞とでリンに対する応答性を検討する。また、XLHの骨芽細胞/骨細胞の異常についてさらに網羅的な解析を行うため、Hypマウス及び野生型マウスから単離した骨細胞を用いて、RNAseqを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
納品が年度中に間に合わない試薬があったため、余剰金が生じた。次年度に使用予定である。
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