研究課題/領域番号 |
21K07846
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
馬場 伸育 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (30711296)
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研究分担者 |
沈 淵 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 講師 (50294830)
王 飛霏 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (10629033)
山下 竜幸 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (30571038)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 臍帯血 / 脳性麻痺 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
臍帯血細胞が発揮する制御性機能に着目して、脳性麻痺に対する臍帯血による再生医療の治療メカニズムに迫ることを目指して、まず、ヒト臍帯血細胞移植を施したマウス脳性麻痺モデル(免疫不全マウス) を用いて、移植後のマウス生体内におけるヒト移植細胞の追跡を試みた。 移植後24時間、48時間、72時間、96時間の時点で、脳傷害部にて検出されるヒト細胞の経時的変化をヒト抗原の発現を指標に評価したところ、最も高頻度にヒト移植細胞が検出されるのは移植後24時間であった。このヒト移植細胞の割合は脳全体の細胞のうち1%程度ととても微少であったが、同一マウスの正常脳組織と比較して有意に多く検出された。これらヒト移植細胞は血球系マーカーであるCD45陽性および陰性の分画を含んでいた。また、単球の表現型を示すCD14陽性分画の存在が特徴的であった。 一方、ヒト臍帯血細胞移植を施した脳障害マウスの脾臓においては、経時的にヒト移植細胞の存在割合が減少する傾向が見られたが、移植4週後においても脾臓全体の10%程度の割合でヒト移植細胞の存在を検出した。マウス脾臓に見られた移植ヒト細胞は主にCD45陽性であり、これらはCD14陰性HLA-DR陽性の表現型を示す非単球系の抗原提示細胞や活性化した血球系の細胞と考えられた。脳傷害部位、または脾臓のいずれにおいても、CD3陽性Tリンパ球、CD19陽性Bリンパ球などの分化細胞やCD34陽性造血幹細胞は検出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳傷害部位へ選択的に集積する移植臍帯血細胞のex vivo評価を実施した。ヒト臍帯血細胞の投与ルートは尾静脈からの移植であることから、傷害を受けた脳組織にとどまらず、脾臓を含めた全身的なマウス生体内の移植細胞の追跡を経時的な変化とともに評価した。移植したヒト細胞をマウス生体内にて検出することができたことから、この結果をもとに特定の臍帯血細胞分画に注目したより詳細な評価検討を進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
マウス生体内における移植ヒト細胞の検出にあって、脳障害マウスの重症度との関連、ヒト抗原の検出特異性と感度、さらには詳細な表現型の変化や機能を評価検討する点に課題を残した。 脳障害マウスの生体内でコンスタントに検出される細胞種を特定して、または、臍帯血に含まる全体の細胞、分離精製が可能である臍帯血の特定の細胞分画に注目して、これらヒト臍帯血由来の細胞が傷害を受けた組織において発揮する制御性の機能をin vitroの実験系で評価して、再生医療のメカニズムを解明する。すなわち、各種臍帯血細胞分画をマウス傷害脳組織の抽出物で刺激する培養や、臍帯血細胞分画とマウス脳組織から採取した細胞を炎症刺激などの条件下で共培養させる。臍帯血細胞が発揮する傷害組織の炎症抑制や組織修復のための環境形成、脳組織細胞の保護やマウス内在性神経幹細胞の分化誘導を統制する作用を評価する。臍帯血細胞が産生するサイトカインなど制御性情報伝達因子の産生能をビーズアレイ定量法や遺伝子発現解析法により、また、内在性神経幹細胞の増殖能、分化能、遊走能について免疫染色を用いた形態学的評価法により解析して、臍帯血細胞が持つ組織修復や機能改善に寄与する制御能を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要な実験動物(免疫不全マウス)の購入や維持管理の飼育にかかる費用として計上していたが、購入の頻度や飼育の規模が想定より低かった。次年度以降、実験動物の拡充のために活用する。
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