研究実績の概要 |
ゲノム編集技術を用いてプラダー・ウィリー症候群責任領域の複数の遺伝子の遺伝子改変マウスを作製した。2021年度にはSnrpn, Snord116, Snord115の遺伝子の欠失マウスを作製したので、2022年度は新たにMkrn3,Magel2, Ndnの遺伝子改変マウスを作製した。 これら各遺伝子、および複数の遺伝子をloxで挟むようにデザインした遺伝子改変マウスを作製し、cre発現マウスと交配することにより父親アレルあるいは母親アレルを欠失するようにした。母親アレルを欠失したマウスは体重増加の異常を認めなかった。父親アレルを欠失したマウスで新生児期体重増加不良を認めたのは、Magel2を含む複数の遺伝子を欠失したマウスであった。またNdn上流に存在するmicroRNAの父親由来アレルの欠失によっても新生児期体重増加不良を認めた。このmicroRNAはインプリンティングを受けており、プラダー・ウィリー症候群モデルマウスのマウス独特の表現型に関与していると考えられるが、現在詳細な解析を行っている。 2021年度に作製したSnrpn exon1上流6kbからエクソン1までを欠失したマウスは新生児期致死ではなかったが、新生児期体重増加不良をみとめた。新生児期脳における遺伝子発現を定量PCR法にて解析したところSnord116の発現低下に加え、Mkrn3,Magel2, Ndnの発現の低下を認め、特にMagel2の発現の低下が体重増加不良に関与していると考えられた。一方、Snrpnイントロン1にはエンハンサーの存在が示唆されていたので、イントロン1を様々な長さで欠失させたマウスを作製した。これらのマウスの遺伝子発現解析からエンハンサー領域を特定し、Snord116、115のエンハンサーとして機能していることを、日本分子生物学会で報告した。
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