研究実績の概要 |
VEGF, HGFなどの血管新生因子に関連したmicro RNA(miRNA)の既報が多く存在する。そこで、まず同一患者血清で肺動静脈瘻(PAVF)発症時とPAVF改善後で発現の差異があるmiRNAの網羅的解析をHuman miRNA Oligo chipのmicroarray解析で行い、PAVF発症時すなわちGlenn手術後に特異的に上昇している7つのmiRNAがリストアップされた。次に、別のPAVF発症時、PAVF改善後の患者血清を用いて、抽出それぞれreal time RT-PCR法を行うと、PAVF発症時の血清でmiR-25-3p, miR-125a-3pで発現が亢進していた。miR-25-3p, 125a-3pはその内在する細胞のmRNAを制御していることが考えられるため、細胞内のmiRNA realtime RT-PCRを行うと、Macrophageは、ヒト単球系白血病細胞株 (THP-1) をホルボール-12-ミリスタート-13-アセタート (PMA) で刺激して分化させたMacrophageにおいてmiR-25-3pの発現が亢進していた。Macrophageに低酸素刺激後のWesternblotを行うとHIF-1αの発現が亢進しており、miR-25-3p mimicをtransfectionさせたMacrophageではHIF1-αの発現がより亢進していた。HIF1-αの高発現はVEGF, HGFなどを誘導し肺血管内皮細胞における血管新生促進因子として働いている可能性がある。一方でGlenn術後で肝臓由来因子の欠乏からPAVFが発症するというこれまでの定説を考えると、肝臓の血管新生に関わる細胞Hepatocyteに着目した。miR-25-3pを高発現させた肝細胞細胞株 (Hepatocyte cell line, THLE-2) の低酸素曝露下の上清で刺激したヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) ではVEGF下流シグナルのERK, Aktのリン酸化が低下しており、Glenn術後の肝臓由来の因子、すなわち、細胞増殖、血管新生を抑制する因子の欠乏もPAVF発症に関わっている可能性も示唆される。
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