研究課題
本研究は川崎病(KD)患者やIgA血管炎患者における補体と自然免疫細胞の相互作用、重症度や予後との相関、最終的には抗補体薬が新規治療薬候補になりうるか検討することを目的としている。先行研究において急性期KD患者の血液中においてC5b-9、C5a、Baが上昇していた。今年度は新規患者および健常コントロール群のリクルート、NETosisの検討、川崎病に類似した臨床像を持つ小児COVID-19関連多系統炎症性症候群(MIS-C)患者における好中球と補体の評価を行った。前回の検体に追加して20名のC5b-9、C5a、Baを測定し、いずれも川崎病ではIVIG投与後、退院時と比較して、発症時は有意に上昇していた(C5a; P<0.05、C5b-9; P<0.01、Ba; P<0.001).また、健常コントロールと発症時を比較して有意に上昇していた。また、MIS-C患者の診断時においても、C5b-9、C5a、Bは健常コントロールと比較し、有意な上昇を認め、さらに川崎病群と比較しても高値の傾向がみられた。今後症例数を増やして検討する予定である。好中球表面抗原は川崎病新規発症2名を追加し、健常コントロールは12名を測定し、C5a受容体( CD88) は川崎病患者で有意に発現が低下していた。MIS-C患者5名でも同様の所見が得られ、MIS-Cでは川崎病よりも表面抗原の変化が強く認められた。NETosisは評価が安定せず、条件検討を追加で行っているところである。
3: やや遅れている
川崎病患者やMIS-C患者の発生が少なく、また好中球の解析という特性上、検体の取り置きが不可能である。そのため患者のリクルートがやや遅れている状況である。現在協力施設を追加し、新規リクルートの強化を行っているところである。
今年度は川崎病新規患者のリクルートを強化するとともに、ラクトバチルスの死菌を用いた既報の川崎病モデルマウスを作成し、抗C5a受容体拮抗薬を投与し、血管炎に対する効果があるかを確認する予定である。現在、マウスモデル作成のために、当モデルを作成している施設に出向き練習を開始している。
川崎病患者が全国的に減少しており、リクルートが想定通りに進まず試薬・消耗品への支出が想定を大幅に下回った。(昨年購入分で対応可能であった)。さらに研究補助人員の体調不良により検体処理ができない時期があったことなども影響した。しかしながら、共同研究者への支出分は全て使い切っている。一方、今年度は川崎病のマウスモデルを使用した研究を開始するため、動物の購入費、外部業者への免疫染色の依頼など、かなりの支出が想定されている。さらに川崎病患者も2023年になり増加しているため、当初の予算は適切かつ必要額であると考えている。
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