研究課題/領域番号 |
21K07854
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
戸川 貴夫 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (10792814)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 遺伝性肝内胆汁うっ滞症 / 全ゲノム解析 / 全エクソーム解析 / 染色体構造異常 |
研究実績の概要 |
我々は2013年から胆汁うっ滞患者約700例に61遺伝子のエクソン領域について網羅的解析を行い,33%で分子遺伝学的診断を確定した.一方で,新生児乳児の未診断例において20%の患者は病原性バリアントを片アレルにだけもつ事を見出した.これは遺伝性胆汁うっ滞疾患に,遺伝子のエクソン領域の異常では説明できない病態がある事を示唆する.本研究はゲノム解析により,エンハンサー,プロモーターなどの発現調節領域,深いイントロンの異常,染色体構造異常に遺伝性胆汁うっ滞の新しい分子遺伝学的病態を求める.新たな責任遺伝子,病態の発見により遺伝性胆汁うっ滞の診断率向上と,将来の創薬開発へ研究の展開を目指すものである. 2021年度から2022年度は全エクソン解析,全ゲノム解析により病原性バリアントの抽出を行った.先行して解析を行った対象は以下のように選定した.我々が過去に胆汁うっ滞遺伝子パネル(61遺伝子)を用いて網羅的遺伝子解析を行ったが,分子遺伝学的に診断確定に至らない患者で,かつ血清直接ビリルビンが5.0mg/dL以上の高度の胆汁うっ滞症例を選定した.先ず3例について全ゲノム解析の塩基配列決定実験を行った.候補バリアントについて,バイオインフォマティクス,知識データベースを活用して,分子遺伝学的病態解析に妥当なものを選択する作業をした.遺伝子コーディング領域やスプライスサイトで明らかな病原性のバリアントは同定されていない.しかし,深いイントロン領域やゲノム構造異常について引き続いてバイオインフォマティクスを活用して解析に取り組んでいる.また並行して17家系に全エクソン解析を行っており,こちらも新たな病的バリアントの探索を行っている.一部の家系で病原性変異の同定が得られている可能性があり,現在病原性について検討中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度から2022年度は研究の基本データを取得するため全ゲノム解析,全エクソン解析と病原性バリアントの抽出を行った.対象は以下のように選定した.我々が過去に胆汁うっ滞遺伝子パネル(61遺伝子)を用いて網羅的遺伝子解析を行ったが,分子遺伝学的に診断確定に至らない患者で,かつ血清直接ビリルビンが5.0mg/dL以上の高度の胆汁うっ滞症3例を選定し全ゲノム解析を行った.また,17家系に全エクソン解析を行い,現在,候補バリアントについて,バイオインフォマティクス,知識データベースを活用して,分子遺伝学的病態解析に妥当なものを選択する作業を行っている.全ゲノム解析について塩基配列は決定できたが,遺伝子コーディング領域やスプライスサイトで明らかな病原性のバリアントは同定されていない.全エクソン解析では自研究室の解析パイプラインを使用して現在検討中である.病原性変異の可能性を示唆する変異について機能解析にいたっておらず,今後の検討課題となっている.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は解析対象例を増やして全ゲノム解析を行っていく予定である.そして,全エクソン解析も併せて,検出されたバリアントについて機能解析実験を開始する.遺伝子,非コーディング領域,深いイントロンのバリアントごとで推定される分子病態が異なるため以下の様な機能解析実験やバリアントの証明実験を計画している.①スプライシング領域はHEK293T細胞によるミニジーンアッセイを行う.②プロモーター,エンハンサー領域はルシフェラーゼアッセイを行う.③胆汁酸トランスポーターなどの機能タンパクの評価はバリアントを導入し形質転換したHepG2細胞を用い,RNAi法により偽胆管の機能を低下させ,蛍光胆汁酸の排泄量を測定して機能評価する.④肝組織病理はBSEP,MRP2などの肝細胞表面に発現するトランスポーターについて,特殊免疫染色により評価する.⑥染色体構造異常についてはarray CGHなどで確定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた全ゲノム解析を行う事が出来なかった事と,それに伴い機能解析実験を行えなかったため次年度使用額が生じた.全エクソン解析を追加することにより研究を進める.
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