研究課題/領域番号 |
21K07857
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
金子 直人 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90791955)
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研究分担者 |
橋本 多恵子 山形大学, 医学部, 助教 (30507629)
服部 元史 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (50192274)
神田 祥一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60632651)
三浦 健一郎 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (70408483)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 巣状分節性糸球体硬化症 (FSGS) / 難治性ネフローゼ症候群 / 遺伝子解析 / 腎移植後再発 |
研究実績の概要 |
巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は難治性ネフローゼ症候群を呈する希少難病である。遺伝子変異の有無によって治療反応性や腎移植後再発率が異なるため、遺伝子解析はFSGSの病因分類や予後予測に非常に重要な役割を果たしている。近年、次世代シーケンサーを用いた網羅的解析がさかんに行われ、FSGS患者全体の11-30%に遺伝子変異が検出されることが報告されている。しかし、網羅的解析は一定の費用と労力を要するため、真に適応となる集団を見極める必要がある。本研究では、詳細な臨床・病理学的情報にもとづいて構築したFSGSデータベースを基盤として、遺伝子変異の同定率、また検出された変異遺伝子と臨床病理像との関連性を明らかにする。 我々は、全国有数のFSGS診療施設と連携し構築したFSGS患者を対象としたデータベース(臨床情報+腎病理情報+一部遺伝情報)をもとに、患者を層別化した。各グループの患者から血液サンプルを採取し、抽出したゲノムDNAを用いて全エクソーム解析を行い、同定された変異について頻度情報、in silico解析などをもとにvalidationを行ったうえでエキスパートパネルで検証した。その結果、遺伝子変異の検出率が極めて高い集団を見出した。また、既知のFSGS病因遺伝子がないことが確認された患者についても解析を行ったところ、初回ステロイドまたはその後の免疫抑制薬などによる治療に反応があることが移植後再発のリスク因子となることが示唆された。 今後さらに解析数を増やし、サブグループごとの遺伝子変異同定率を検討し、本層別化の有用性を検証する。また、遺伝子変異が同定された症例においては、同定された変異遺伝子と臨床病理像との関連性を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国のFSGS診療施設 (7施設)と多施設共同研究を行い、二次性FSGSを除く1歳以上15歳以下発症のFSGS患者 (70例)を対象としデータベースを作成した。各患者について臨床情報+腎病理情報+遺伝情報を収集し層別化した。遺伝子解析が未施行もしくは不十分と考えられた症例については、全エクソーム解析を行い同定された変異について多施設からなるエキスパートパネルで検証した。 その結果、遺伝子変異の検出率が極めて高い (93%)集団を見出すことができた。また、既知のFSGS病因遺伝子がないことが確認された患者 (15例)を対象に移植後再発の有無に関して解析したところ、初回ステロイドまたはその後の免疫抑制薬などによる治療に反応があることが移植後再発のリスク因子となることが示唆され、いずれも新しい知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
多施設連携を継続し、対象症例数を増やす予定である。さらにサブグループごとの遺伝子変異同定率を検討し、本層別化の有用性を検証する。また遺伝子変異が同定された症例においては、同定された変異遺伝子と臨床病理像との関連性を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により移動を伴う活動が制限され、予定していた旅費の支出がなかったため次年度使用額が生じた。当該助成金に関しては、次年度に遺伝子解析に使用する予定である。
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