研究分担者 |
鈴木 英雄 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00400672)
磯辺 智範 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70383643)
内田 文彦 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70736008)
岡田 浩介 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80757526)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 客員教授 (90241827)
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研究実績の概要 |
NASHの発症・進展には細菌菌体成分であるリポ多糖(LPS)の関与が報告されている.一方, 生体の酸化ストレスセンサーであるKeap1-Nrf2 pathwayの異常は酸化ストレスの増大より肝発癌を誘発する. 本学で開発されたSqstm1:Nrf2遺伝子二重欠失(DKO)マウスでは, 肥満と随伴するdysbiosisにより増大したLPSが, Gut-Liver axisのルートを介して, 肝の炎症性障害と線維化反応の蔓延によりNASH発症と肝発癌に至る. 一方, 本学で開発された抗酸化nano-medicine(低分子量ニトロキシドラジカルを中心に位置する直径40nmのpH非応答性レドックス粒子: RNP)は, 経口投与により腸管, 肝臓に高濃度に集積し, 血漿中に高濃度に滞留する. RNP は悪玉活性酸素種を選択的に消去し顕著な抗酸化作用を発揮するより, LPSによる肝障害を軽減し, 肝発癌を抑止する可能性がある.本年度は,DKOマウスRNPを経口投与し,脂肪性肝炎の病変進行と肝癌に対する抑止効果を検討した.高脂肪食摂餌RNP投与群(R)と非投与群(C)では, 肝病理組織のSAF scoreにおいて脂肪化はR群で高値である一方(C: 2.2±0.1, R: 1.8±0.1),炎症に差はなく,線維化は,C群よりも軽度であった.R群では腫瘍発生は認められなかったが,C群では17 /52例に腫瘍が認められた.RNP投与により血中LPS濃度の変動は認められなかったが,C群中の腫瘍が見られた群と比較し, 肝におけるLBP発現は低下していた. 腸内細菌叢のゲノム解析より, 通常食と比較して高脂肪食摂餌は腸内細菌の種多様性を低下させたが,一方,RNP投与は種多様性を回復させた.RNP投与による腸内環境の改善は,肝へのLPS流入の減少につながり,線維化進展と肝発がんを抑止した.
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