研究課題
今年度はNASHを含むヒト慢性肝疾患におけるNRF2の発現を解析することにより,ヒト慢性肝疾患の発症進展とNRF2の生体防御システムの役割を明らかにすることを目的とした.NRF2の肝細胞における染色強度は,慢性肝疾患における病理学的肝炎症,線維化と有意に関連し,肝の炎症や線維化の高度な症例ではNRF2の染色強度が低下していた.対照肝とNASHの比較(低強度群 vs. 高強度群:炎症;P = 0.003,線維化;P = 0.014)において,NRF2の染色が低強度である群の方が高強度群よりも肝の炎症線維化が重症であった.このことは,肝細胞の細胞質におけるNRF2の発現が,非腫瘍部における肝臓の炎症と線維化と逆相関していることを示している.また,肝細胞の核におけるNRF2の局在と核濃染(核移行と考えられる)については,炎症(CRCとNASH;R=0.451,P<0.001)および線維化(CRCとNASH;R=0.566,P<0.001)と相関を認め,核局在および核濃染が高度の症例では,肝炎症・線維化が高度であった.肝細胞の細胞質におけるNRF2の免疫染色強度の低下と核内移行は,肝炎症と線維化の病理所見と相関していた.NRF2の脆弱化は慢性肝疾患における酸化ストレスを増悪させ炎症,線維化を促進させるものと考えられた.前年度には,抗酸化nanoparticle (RNP)は,悪玉活性酸素種を選択的に消去し顕著な抗酸化作用を発揮するより,Sqstm1:Nrf2遺伝子二重欠失(DKO)マウスにおける肝線維化と肝発癌を抑止することが判明している.これらのことより,RNPはNRF2の発現低下(脆弱化)により生体の抗酸化作用が低下した個体において,慢性肝疾患における肝病態の増悪(肝炎症・線維化)の進展を抑止する生体材料である可能性が示唆された.
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