研究課題/領域番号 |
21K07862
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
豊田 秀実 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (60525327)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 神経芽腫 / ポリオウイルス |
研究実績の概要 |
これまで我々は、ポリオウイルス(以下PV)は神経芽腫細胞に対して強い抗腫瘍活性を持つ事を報告してきました。これまでの研究で申請者らが用いた神経芽腫細胞株は、マウス神経芽腫細胞株(Neuro-2a)にCD155をトランスフェクトして発現させた細胞(Neuro-2aCD155)であるため、強制発現させたCD155が抗腫瘍免疫の標的分子になっている可能性があります。そこでCD155を発現していないマウス神経芽腫細胞株(Neuro-2a)を、すでに抗腫瘍免疫を獲得したCD155tgA/Jマウスに移植し腫瘍の形成が認められるか否かを検討したところ、腫瘤形成しませんでした。なお、抗腫瘍免疫を獲得していないCD155tgA/JマウスにNeuro-2aを移 植した場合、腫瘤は形成されました。このことから、我々がトランスフェクトしたCD155は抗腫瘍免疫の標的分子になっていないことが明らかになりました。 次にin vitroでの抗腫瘍効果の実験を行いました。Neuro-2aCD155 とNeuro-2aに対し抗腫瘍免疫を獲得したCD155tgA/Jマウスから脾細胞を採取し、神経芽腫細胞株(Neuro-2aとNeuro-2aCD155)と混合培養したところ、上清中LDHの上昇が認められました。しかし、抗腫瘍免疫を獲得していないCD155tgA/Jマウスの脾細胞と神経芽腫細胞株を混合培養した上清中のLDHは上昇していませんでした。さらに、CD4, 8, NKのそれぞれの細胞を脾細胞から除いて腫瘍細胞障害実験を行いましたところ、CD8細胞を除去したマウス脾細胞は神経芽腫細胞株に対し抗腫瘍効果を示しませんでした。このことから、神経芽腫をPVで治療することにより抗腫瘍免疫が誘導されることがin vivoとin vitroの実験で証明され、CD8T細胞が抗腫瘍免疫獲得に重要であることが証明されました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経芽腫をポリオウイルスで治療することにより誘導される抗腫瘍免疫に関わる抗原を同定するため、ポリオウイルス感染で細胞死した神経芽腫細胞による抗腫瘍免疫誘導能の検討を行っている。マウスモデルを用いた実験の暫定結果では、弱毒ポリオウイルス感染により細胞死が誘導された神経芽腫細胞は、抗腫瘍免疫を誘導する能力があることが示唆されており、予定した研究を順調に遂行しております。
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今後の研究の推進方策 |
ポリオウイルス(PV)による神経芽腫治療により誘導される抗腫瘍免疫に関係する抗原を同定するため、PV感染で細胞死した神経芽腫細胞に抗腫瘍免疫誘導能があるか否かを検討します。PV感染により細胞死を誘導したNeuro-2aCD155細胞と、凍結・解凍により細胞死を誘導したNeuro-2aCD155細胞の2種類のHomogenateを準備します。 上記で得られたHomogenateでCD155tgA/Jマウスを免疫する際、以下の4グループに分けます。1,PBSのみ、2,PV感染により細胞死を誘導したNeuro-2aCD155細胞(Homogenate)、3,凍結・解凍により細胞死を誘導したNeuro-2aCD155細胞(Homogenate)、4,凍結・解凍により細胞死を誘導したNeuro-2aCD155細胞(Homogenate)+PV。 免疫終了後にNeuro-2aCD155細胞をマウスの尾静脈から静注し、播種性腫瘤形成を予防できるか否か検討します。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大のため、予定していた研究時間を確保することが困難となり、当該年度に予定していた研究の一部をを次年度に延期いたしました。そのため次年度使用額が生じました。次年度使用計画は、マイクロアレイ解析に用いる消耗品の購入や、マウスの購入・飼育費用に使用する予定です。
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