研究課題/領域番号 |
21K07873
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
山本 俊至 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (20252851)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 染色体異常 / マイクロアレイ染色体検査 / long-read sequencer |
研究実績の概要 |
研究代表者は、原因不明の神経発達障害の成因を明らかにするため、これまで数千例の患者のゲノムコピー数解析を行ってきた。その結果、疾患の原因遺伝子の同定に繋がるような貴重な染色体微細異常を数多く報告してきた。染色体微細異常の多くは単純な欠失や重複であり、non-allelic homologous recombination (NAHR)によって引き起こされる場合が多いことも明らかになっている。一方、染色体微細異常の中には一部がさらに3重複しているなど、一見して複雑な構造異常を示す例もあり、duplication-inverted/triplication-duplication (DUP-INV/TRP-DUP)によるものであることを明らかにできた例もある。このように、染色体微細構造異常の中には複雑な構造異常を示し、発生メカニズムも明らかでないものもある。 今年度は同じ染色体腕内に2つの欠失が連続するもの、同じ染色体腕内に欠失と重複が連続するものそれぞれ2例について構造解析を行い、メカニズムを明らかにした。その結果、近傍の2つの異常はそれぞれ独立して形成されているのではなく、お互いに複雑な構造異常を形成していることが明らかになった。 連続する2つの欠失はchromothripsis によって説明することができたが、欠失と重複が連続するタイプでは切断点に由来不明の塩基配列が挿入されており、alternative nonhomologous end-joiningが関わっていると考えられた。この結果から、複数の染色体欠失や重複が連続する場合、より複雑な構造異常が生じていることが示唆された。複雑な構造異常が疑われる場合は、全ゲノム検査によるより詳細な分析が推奨される。 さらにサンプルを増やして解析し、構造異常のメカニズムを明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、初年度に解析した同じ染色体腕上に2つ以上の欠失ないし重複を示す4例について、long-read sequencerによる全ゲノム解析の結果をまとめて投稿した。その結果はAm J Med Genet Aに掲載された。この解析では、全ゲノム解析結果で得られたBAMファイルを用いてIGVで視覚化し、soft-clipする断端に注目してプライマーを設定し、PCRを行い、増幅産物が得られたものについては引き続きサンガー法で塩基配列を決定した。その結果、4サンプルにおいて全ての切断融合点を同定することができた。現在染色体サブテロメア領域のinverted-duplication-deletion (INV-DUP-DEL)も含めた複雑な構造異常の解析を行っており、切断点における反復配列などの特徴や、レトロトランスポゾンとの関りについて検証する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、複雑な染色体構造異常の1つである染色体サブテロメア領域のinverted-duplication-deletionの解析を行ってきた。現在その成果を論文として投稿中である。さらにDUP-TRP/INV-DUPの解析も進めていく。最終的には切断融合点の配列の特徴や、レトロトランスポゾンとの関りについて検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度260円、次年度に繰り越すこととなったが、キャンペーン特価の際に試薬を購入するなどの対策を行ったため、若干の剰余金が生じたものである。今年度の研究の遂行に問題はなく、次年度以降の研究に余裕を持ってあたることが可能となり、研究計画に影響はない。
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