研究実績の概要 |
①令和3年度~令和4年度前半は炭酸ナトリウム溶液を用いた蛋白質抽出を検討し高深度プロテオーム解析に適したサンプル調製法を確立した。各操作を最適化し簡便かつ効果的なプロトコルを完成させた。 ②令和3年度後半~令和4年度は乾燥ろ紙血から抽出した蛋白質に特化した高深度プロテオーム解析法の開発を行った。血液蛋白質はこれまで解析してきた培養細胞や生体組織と蛋白質の種類や濃度のダイナミックレンジが大きく異なるためシステムを再構築する必要があった。LC-MSのLCシステムについては、カラム充填剤の種類、カラム長、流速などを最適し、MS部分についてはより多くの乾燥ろ紙血蛋白質を観測する為のDIA法のMSレンジ、Isolation window幅、フラグメントイオンの蓄積時間などのパラメーターやノイズ除去の為のイオンモビリティーの電圧条件を最適化した。最終的に1検体1測定により乾燥ろ紙血から1,000以上の疾患原因蛋白質を含む3,000以上の蛋白質を同定・定量することができた。 ③令和4年度後半から令和5年度は疾患原因蛋白質の定量に用いる安定同位体標識ペプチドを作成した。13種類の疾患関連タンパク質由来の38種類のペプチドを大腸菌由来の無細胞発現系と多重共発現系を組み合わせて一斉に作成し、12種類の疾患関連タンパク質由来の33種類が検出できることを確認した。実際にヒトの乾燥ろ紙血から抽出した蛋白質にスパイクインし疾患原因蛋白質が精度よく安定的に定量できることを確認した。検出できなかったペプチドについては蛋白質の発現レベルが低い、あるいはイオン化効率の良いペプチド候補がなかったことなどが原因である。 本研究については概ね予定通り遂行することができた。その成果は論文として発表した。
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