研究課題
生物時計は地球の自転に伴う環境のサイクルと体内のサイクルを同調させるシステムである。生物時計は種々の代謝恒常性維持制御に関わっているが、腸管生物時計は栄養素の吸収機構を制御し、その破綻は栄養素の吸収障害を引き起こす。一方、妊娠母体の生物時計の破綻は子宮内発育遅延と関連することが報告されている。子宮内発育遅延児は、胎児プログラミング機構を介して成人期の耐糖能異常と関係するため、妊娠母体の生物時計の破綻は出生児の成人期の耐糖能異常の原因になりうる。しかし、その詳細な分子機構は不明である。そこで、本研究では腸管生物時計に注目し、①腸管生物時計の破綻はグルコース吸収低下を引き起こし低栄養の原因になる、②妊娠母体の腸管生物時計の破綻は胎児低栄養を引き起こし、胎児プログラミング機構を介して、出生児の成人期における耐糖能異常の原因になるという2つの仮説を、腸管特異的に時計遺伝子Bmal1を欠損するマウスを用いて時間栄養学の観点から検証することが本研究の目的である。初年度は、腸管特異的Bmal1欠損マウスを用いて、生物時計によるブドウ糖吸収制御機構の解析を行った。ブドウ糖吸収に関わるSGLT1にはリズム性の発現があり、BMAL1/CLOCKによる制御を受けていることを見出した。さらに、腸管特異的Bmal1欠損マウスではブドウ糖吸収が時間依存性に低下していることを見出した。現在、ブドウ糖吸収低下が全身性の糖代謝恒常性維持機構に与える影響を検討している。
2: おおむね順調に進展している
腸管特異的Bmal1欠損マウスを用いた検討から、生物時計によるブドウ糖吸収機構の機序を解明できており、当初の計画通りである。
腸管生物時計によるブドウ糖吸収異常が全身の糖代謝維持機構に与える影響の検討を行う。特に、肝臓におけるグリコーゲン蓄積、飢餓に対する応答性などの表現型の評価が大切と考えている。その結果をもとに、腸管特異的Bmal1欠損マウスから出生した仔マウスとコントロールマウスから出生した仔マウスにおける体重増加、脂肪蓄積の差異の検討を行っていく予定である。
コロナ禍で旅費の支出が0円であったこと、また実験がうまくすすみ、予定より物品費が少なくできたことによる。しかし、次年度には、情報収集のための学会参加や動物実験・分子生物学的実験を多く予定しており、繰り越し分も含めた予算を要する。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)
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