研究課題/領域番号 |
21K07888
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮林 弘至 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50634961)
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研究分担者 |
伊地知 秀明 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70463841)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | BMP / 膵癌 / マウスモデル |
研究実績の概要 |
膵癌は難治癌の最たるものであり、その病態の解明・治療法の開発は急務である。膵癌の発癌および進展のメカニズムを理解するため、膵臓特異的な遺伝子改変マウスによる、ヒトの膵癌をよく模倣する膵癌モデルが作成されてきた。同じTGF-b-SMADシグナルの中で、 Tgfbr2とSmad4のknockout(KO)の違いにより得られる表現型が明らかに異なることから、この表現型の相違にはSMAD4を共有するTGF-bファミリーのBMPシグナルの関与が示唆された。BMPシグナルは癌に対し促進的か抑制的か、いまだ解明されていない点も多いため、 我々は膵癌の発癌および進展におけるBMPシグナルの寄与を検討した。 BMPの膵発癌への影響を検討するため、恒常活性型KrasG12D発現(PanIN)マウスではPanINが3週頃より形成されるが、セルレインで膵炎を誘発するとADM・PanIN形成が促進されるモデルが報告されており、セルレイン誘発性ADMにおけるBMPシグナルの関与を免疫染色でSMAD1/5/8リン酸化を評価すると共に、BMPリガンド、レセプターの発現を定量PCRで評価し、膵発癌にBMPシグナルが重要であることを示した。 BMPの膵癌進展への影響を検討するため、Bmp7強制発現K518細胞で、P-Selectinノックダウン株を作成し、P-Selectin依存性を確認した。P-Selectin強制発現K518細胞をヌードマウスに移植し、P-Selectinが腫瘍の進展に重要であることを示した。 BMP分泌細胞の同定のため、ヒト膵癌のデータ解析により腫瘍細胞と線維芽細胞でBmp7の発現が亢進していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BMPの膵発癌への影響について、セルレイン誘発性ADMにおけるBMPシグナルの関与を示し、そのメカニズムとしてBMPリガンド、レセプターの発現が重要であることを示した。 BMPの膵癌進展への影響について、BMPで誘導されるP-Selectinが腫瘍の進展に重要であることを示した。また、ヒト膵癌のデータ解析で腫瘍細胞と線維芽細胞でBmp7の発現が亢進していることがわかった。 以上より、研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
BMPの膵発癌への影響を検討するため、遺伝子改変マウスを用いてBMPR2ノックアウトにおける膵発癌への影響を調べる。またBMP阻害剤の膵発癌への影響を検討する。 BMPの膵癌進展への影響を検討するた め、遺伝子改変マウスを用いてBMPR2ノックアウトの、増殖マーカー(Ki67)やERKリン酸化への影響や、間質への影響を免疫染色などで検討する。 BMPの治療可能性を検討するため、BMP阻害剤やP-selectin阻害剤の影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に遺伝子解析マウスの実験以外を重点的に施行したため、本年度分のマウス実験の経費を次年度に使用する。次年度に予定された細胞株を用いた実験と、本年度・次年度に予定された遺伝子改変マウスを用いた研究を並行して行い、研究費を使用する。
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