研究課題
胃癌の主要な誘導因子はHelicobacter pylori(ピロリ菌)である。我々はこれまでに、東アジアピロリ菌株を用い、対照的な胃疾患である胃癌(GC)と十二指腸潰瘍(DU)に由来する菌株をゲノムワイド遺伝子関連解析(GWAS)にて比較し、胃癌株に優位に関連する1遺伝子変異(SNP)を持つ11遺伝子を選択した。新たに導入した胃オルガノイド感染実験系を用いて、十二指腸潰瘍および胃癌発症に関与するピロリ菌病原体因子と、関連する宿主因子を明らかにしてゆく。今年度は、昨年度確立した日本人胃幽門部由来の二次元胃オルガノイドを用いた感染実験を行い、感染オルガノイドのmRNAを回収しアレープレートを用いたRT-qPCR発現解析を行った。その結果、ピロリ菌感染により、サイトカイン遺伝子5種、DNA修復機構遺伝子4種、がん関連遺伝子10種に2倍以上の発現上昇を認めた。候補遺伝子については確認実験を行うと共に、感染実験のタイムコースなど詳細な実験条件をなお設定中である。そのために胃上皮系AGS細胞感染実験も並行して進めたが、mRNA実験条件最適化によりサイトカイン遺伝子11種においては感染細胞では10倍以上の発現上昇を認めた。さらに解析を進めてゆく。また、ピロリ菌病原因子解析においては、GWAS-SNPを持つ11遺伝子のうちのdsbG遺伝子について26695株を親株として用い、dsbG遺伝子破壊株、GC-SNP含有dsbG遺伝子相補株、DU-SNP含有dsbG遺伝子相補株を作成し、酸性条件下でのみ遊走能に差があることを明らかにした。In vitro機能評価実験と共に、病原性の評価がしやすいIn vivoスナネズミ感染実験に移行することも視野に入れ、スナネズミ馴化東アジア株TN2株を用いて、dsbG遺伝子改変株を作成中である。またdsbG以外にも3つのGWAS抽出遺伝子改変株を作成中である。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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