研究課題/領域番号 |
21K07900
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
松浦 稔 杏林大学, 医学部, 准教授 (30402910)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸管微生物叢 / 免疫可塑性 / 移入 |
研究実績の概要 |
1)腸管微生物叢を曝露する時期および構成内容が宿主の免疫発達に与える影響 4週齢および10週齢の無菌(GF)マウス(C57BL/6)に週齢・性別が一致したSPFマウス(C57BL/6)由来の腸管微生物叢を移入した元無菌マウス(ex-GFマウス)を作成した。移入4週後におけるマウスの生育状態(体重、腸管長)、大腸粘膜固有層、腸間膜リンパ節(MLN)および脾臓におけるCD4陽性T細胞分画(Th1、Th2、Th17、Treg)、また大腸組織やMLNにおけるサイトカインの遺伝子発現を比較し、腸管微生物叢の曝露が宿主の発育および免疫発達に与える影響を検討した。その結果、マウスの発育や腸管組織構造には両群間に明らかな差を認めなかった。一方、若年(4週齢)ex-GFマウスではSPFマウスに類似したCD4陽性T細胞分画を認めたが、成熟(10週齢)ex-GFマウスではTh2優位のGFマウスに類似したCD4陽性T細胞分画を認め、若年ex-GFマウスでのみ免疫可塑性が観察された。 2)腸管dysbiosis是正の成否に影響する因子の検討 4週齢のGFマウス(C57BL/6)に、性別が一致して週齢が異なる(4週齢あるいは10週齢)SPFマウス(C57BL/6)由来の腸管微生物叢を移入した元無菌マウス(ex-GFマウス)を作成した(A群:4週齢SPF-microbiota →4週齢ex-GFマウス、B群:10週齢SPF-microbiota →4週齢ex-GFマウス)。移入4週間後に各群のマウスの糞便から抽出したDNAを用いて16S rRNA遺伝子シーケンシングを行い、腸管微生物叢の特徴とその差異を解析した。その結果、A群とB群の細菌構成は類似しており、若年マウスに生着しやすい細菌が存在すること、また若年宿主における週齢特異的な宿主側の因子がそれらの細菌選択に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は無菌動物を使ったex vivo実験を中心に行った。無菌動物飼育環境の整備および使用する無菌動物の調整後、研究計画で予定した解析に必要な検体採取をすすめた。当初、3、7、11週齢の無菌マウスを使用する予定であったが解析に必要な無菌マウス数が大幅に増加するため、研究遂行の実現性を考慮し、若年期(4週齢)と成熟期(10週齢)に絞って当初の計画に従って研究を開始した。現在、腸管微生物叢の移入に伴う宿主(マウス)の身体的発育や免疫発達に与える影響、腸管微生物叢の構成に与える影響に関する解析についてはほぼ完了し、おおむね当初の研究タイムラインとおりに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も当初の研究計画に従って解析を進めていく。 1)腸管微生物叢を曝露する時期および構成内容が宿主の免疫発達に与える影響 現在、腸管微生物叢を移入した元無菌マウス(ex-GFマウス)の腸内細菌叢の構成について解析を進めているが、今後はMetagenomic shotgun sequencingデータを用いて、その機能解析を行う。さらにAnvi’oを用いて細菌のMetagenome-assembled genomeを得ることによりstrainレベルでの同定と機能解析を行う。 2)腸管dysbiosis是正時期による腸炎発症リスクの軽減効果 SPF環境下におけるIL-10KOマウスの周産期抗菌薬投与IBD動物モデルを用いて、腸管微生物叢への介入によるdysbiosisの是正が腸炎発症リスクの軽減効果と適切な介入時期を明らかにする。具体的には、抗菌薬を投与された母体から生まれた仔の4または10週齢時に、抗菌薬未投与の母体から生まれたそれぞれ同週齢(4または10週齢)の仔から採取した糞便を用いて腸管微生物叢の移入を行い、生存率、DSS腸炎の重症度が改善するかを検討する。さらに経時的体重変化、糞便性状を含む臨床所見、糞便中LCN-2濃度、病理組織所見ならびに組織学的スコアを用いて腸管炎症について評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
検体サンプル数の増加も相まって、腸内細菌叢の構成を解析するための外注検査費用(16S rRNA アンプリコン解析 223検体)が当初の予定額よりも大幅に増加した。そのため、各種試薬や測定キットなどの購入に見積もっていた予算(物品費)の一部を外注検査費用に充当し、物品費の一部を次年度に繰り越したため次年度使用額が生じた。次年度についても腸内細菌叢に関する解析費用が増加することが予想されるため、次年度の研究経費についても今年度と同様、細菌叢解析に必要な外注検査費用に充当する予定である。
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