無菌(GF)マウスにSPF由来の腸管微生物叢を移入し、移入4週間後におけるレシピエント(元無菌マウス:ex-GFマウス)の腸内細菌叢、腸管構造、免疫プロファイルを検討した。その結果、若年マウスには免疫発達の可塑性があり、さらに週齢相応の腸管微生物叢を選択、構築し、宿主の健常な免疫発達を可能にするメカニズムが存在する可能性が示唆された。そこで、幼少期に生着する腸内細菌叢の選択に関与して、週齢特異的な宿主側の因子について検討した。4週齢GFマウス(E群)と10週齢GFマウス(L群)における回腸粘膜と大腸粘膜の発現遺伝子についてmRNAマイクロアレイ解析(対象は22206遺伝子)を実施した。E群とL群は主成分分析によるプロット図において異なるクラスターを形成し、特に回腸粘膜で、週齢により異なる遺伝子発現パターンとなっていることが示された。さらに、回腸粘膜におけるE群とL群の比較で発現量比が2倍以上で有意に異なる遺伝子として、120遺伝子が抽出され、E群で優位に発現している遺伝子は66遺伝子、L群で優位に発現している遺伝子は54遺伝子であった。これらの遺伝子について、10週齢SPFマウスをドナーとして4週齢または10週齢GFマウスに腸管微生物叢を移入した際に生着した細菌構成との相関解析を行った。E群の回腸粘膜に優位に発現している遺伝子と強い正の相関関係を示す細菌属として、Lachnospiraceae NK4A136 group属、Roseburia属が同定された。これらの2細菌属は、4週齢SPFマウスにおいて最も高い占有割合を示す2細菌属であった。さらに、4週齢SPFマウスにおいて、10週齢SPFマウスよりも、有意に高い占有割合であった。これらの結果は現在、英文国際誌に投稿中である。
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