研究実績の概要 |
胃がんは「がん検診」導入後も癌部位別死因3位、見逃し率約25%である。我々は、通常内視鏡検査時に廃棄される胃洗浄廃液から回収・解析したDNA異常を、胃がん分子マーカーとすることで、従来法の弱みである「見逃し」の解消につなげることができるほか、存在・予測診断にも応用可能であることを2009年Gastroenterology誌)に報告した。また、胃洗浄廃液内に混在した複数種ピロリ菌の全ゲノム解析により「胃がんに特異的なピロリ菌遺伝子異常「hopL」「cag17」の同定に成功し、2020年Int.J.Cancer誌に報告した。更に、これらの分子マーカーに「AI内視鏡診断能(Artificial Intelligence endoscopic diagnosise)」を加えると、病理医でも判断の迷う高度異形細胞・早期胃がん診断にも有効な可能性を2021年J.Clin.Lab.Anal.誌に報告した。本研究では「廃液」を用いたヒト+ピロリ菌ゲノム異常分子マーカーに、AI診断を加える」ことで超早期胃がん診断を目指すものである。結果、胃がん分子マーカーにおけるAUC(MINT25:0.465, SOX17:0.554, miR34:0.490, BARHL2:0.659)に対して、AI診断におけるAUC(Area Under the ROC Curve) は0.999と非常に高く、興味深いことにNBI、拡大観察やインジゴカルミン染色よりも白色光による観察画像を基にしたAI診断の方がより優れる傾向にあった(p=0.662, p<0.0001,P<0.0001)。胃がん分子マーカーは予測診断に、AI診断は同定診断に有効な可能性が示唆された。現在論文をJ.Clin.Lab.Anal.誌に投稿中である。
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