研究課題/領域番号 |
21K07903
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
塩谷 昭子 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80275354)
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研究分担者 |
内藤 裕二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00305575)
井上 亮 摂南大学, 農学部, 教授 (70443926)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 酪酸産生菌 / 粘膜関連細菌叢 |
研究実績の概要 |
過敏性腸疾患(irritable bowel syndrome:IBS) の病態に、腸管免疫を介して腸内細菌が関与していることが報告されている。腸管上皮の粘膜に付着している細菌叢、粘膜関連細菌叢(Mucosa-associated Microbiota:MAM)を解析し、下痢型IBS(IBS-D)、便秘型IBS(IBS-C)および健常者の3群で比較検討した結果を以前に報告したが、さらに、症例数を追加し同様に3群で比較した。大腸内視鏡検査の際に、ポリエチレングリコールを用いた前処置後に内視鏡下にブラシを用いて回腸、S状結腸粘膜の粘液を採取した。各サンプルからDNAを回収し、MiSeqによる16Sリボゾーム遺伝子のV3-V4アンプリコンシークエンス解析を実施した。QIIMEを用いて微生物の属レベルまでの同定を行い、細菌構成比、多様性について検討した。対象は当院を受診した下痢型IBS(IBS-D)30例、便秘型IBS(IBS-C)33例および健常コントロール23例。α-diversityは3群で有意な差を認めなかった。PCoA解析において, Weighted、Unweightedともに3群間で有意差を認めなかった。菌叢解析では属レベルで健常者と比較して、IBS-DおよびIBS-Cに共通してSigmoidでDoreaが有意に多く、回腸末端で butyricicoccus, Lachnospira が有意に少なかった。IBS-Dにおいて回腸末端およびS状結腸においてMegamonasが多く、回腸末端でRuminococcusが少なかった。IBS-Cにおいて回腸末端およびS状結腸にRoseburiaが少なく、Clostridium 4が有意に多かった。回腸末端においてParabateroidesおよび Akkermansia が有意に多かった。対照群と比較してIBS-DとIBS-Cの両群に共通してDorea が多く、酪酸産生菌が有意に少なかった。糞便中の有機酸解析で酪酸との関連性は認められなかったが、現在、症例を追加してさらに解析を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床研究は概ね進んでいるが、動物実験で母子分離(maternal separation: MS)IBSモデルを作成し、研究をすすめたが、急性ストレスに対しての反応に関する性差は認められたが、十分な便性状の変化が認められなかった。IBSマウスモデルの作成方法を変更し、便性状の変化を伴うIBS動物モデルに対して再検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで母子分離(maternal separation: MS)マウスで検討をしたがIBSモデル動物としては問題があり、今後は慢性社会的敗北ストレス(chronic social defeat stress: cSDS)を使用する。(1)cSDS:体格の大きいCD-1マウス(攻撃性マウス)ケージにC57BL/6Jマウス(IBSモデルマウス)(1匹対1匹)を入れる。毎日10分、連続10日間ストレス負荷を行う。便の状態を判別、体重、体温、心電図、血流量、不安程度(オープンフィールド試験、強制水泳試験、尾懸垂試験、ビー玉埋めテスト等)を測定する。IBSの発生は便の状態と水分量等(ブリストルスケール及び代謝ケージ等)を判別、体重、体温、心電図、血流量、不安程度(オープンフィールド試験、強制水泳試験、尾懸垂試験、ビー玉埋めテスト等)の違いとして判断する。腸内細菌は二次世代、便中短鎖脂肪酸は液体クロマトグラフィー(LC-MS)を分析する。ラット、マウスとヒトの正常及びIBS糞便移植は糞便溶解液(6個糞便ペレットを1mLの滅菌生理食塩水に再懸濁し、10秒ボールテックスし、800g 3分遠心後の上清を経口ゾンデ投与を行う。加えて、脳腸相関を検討するため、各群ラット、マウスの腸、脳視床下部、下垂体、海馬及び副腎を採取し,副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)、副腎皮質刺激ホルモ(ACTH)、コルチコステロン、オキシトシン、グルココルチコイド受容体(GR)等のmRNA発現量を比較する。併せて、血中のセロトニン、コルチコステロン、ACTH等の濃度も測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた消耗品が残金では購入不可となり、大学の研究費で購入したため次年度使用額が生じた。次年度使用額は試薬等の消耗品に使用する予定。
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