研究課題/領域番号 |
21K07905
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(金沢医療センター臨床研究部) |
研究代表者 |
西川 昌志 独立行政法人国立病院機構(金沢医療センター臨床研究部), その他部局等, 研究員 (90794511)
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研究分担者 |
岡田 光 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任助教 (50788916)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 新規血管内皮細胞マーカー / 肝線維化 / 肝発がん |
研究実績の概要 |
肝細胞癌の発癌基盤となる肝線維化病態に対する治療薬は未だ存在しない。そのため、肝線維化への進行に対する治療薬の研究基盤の開発は急務である。申請者は、ヒト肝組織を用いたCpGメチル化網羅的解析から、発現プロモーター上のCpG islandに脱メチル化が生じ発現増加により肝線維化病態形成増悪に働く新規線維化因子TMEMを同定した。更に、脂肪肝(NAFLD)及び非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の118例のヒト連続肝生検のRNA-seq解析から、TMEMの発現増加がNAFLD Activity Score(NAS Score)や線維化と強く相関することが明らかになった。申請者は、TMEMの発現が門脈周囲の血管内皮細胞に局在しており、肝線維化病態進行に伴いTMEM164陽性血管内皮細胞数が増加することを発見した。しかしながら、肝線維化病態進行の過程において、TMEM陽性血管内皮細胞が肝臓の構成細胞に対しどのような機能的役割を担っているか明らかでない。そこで、申請者はTmem KOマウス/肝類洞内皮細胞特異的TMEM KOマウスを用いて脂肪肝・非アルコール性脂肪性肝炎に対する生理学的役割を詳細に検討しようと考えた。 本研究では、門脈周囲のTMEM陽性血管内皮細胞は肝線維化病態形成に対してどのような生理的役割があるかをin vitro及びin vivoにて検討する。本年度は、60%高脂肪食投与後のTmem全身欠損マウスによる実験を実施した。60%高脂肪食投与後のTmem全身欠損マウスは、野生型マウスと比較して肝組織にのみインスリン抵抗性を示した。この現象は、門脈周囲から炎症を引き起こす四塩化炭素モデルとは逆の結果だった。インスリン抵抗性の原因の一つとして、Tmemの発現抑制が肝組織内のマクロファージ/クッパー細胞の炎症惹起に働くことを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
60%高脂肪食投与後のTmem全身欠損マウスは、野生型マウスと比較して肝組織にのみインスリン抵抗性を示した。この現象は、門脈周囲から炎症を引き起こす四塩化炭素モデルとは逆の結果だった。インスリン抵抗性の原因の一つとして、Tmemの発現抑制が肝組織内のマクロファージ/クッパー細胞の炎症惹起に働くことを突き止めた。Tmemの炎症抑制機序を解明するため、60%高脂肪食投与後のTmem KO及び野生型のマウス初代クッパー細胞を72時間培養した培養液を使ったショットガンプロテオーム解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
Tmemの既存抗体は、IHCのみしか機能しないため新たに2種類作成した。2種類の抗体が、FlowcytometryやWBに使用できるかを評価する。これらの抗体を用いて、細胞膜上に発現するTMEMの機能解析、TMEM陽性血管内皮細胞やクッパー細胞の出現が肝線維化病態形成及び発癌に対する生理的役割の解明、の2点を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたよりも物品費を安く抑えることができ、コロナウイルス感染拡大による旅費の支出も少なかったため未使用額が発生したが、引き続き次年度以降の物品購入や旅費等に使用する。
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