研究課題/領域番号 |
21K07905
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(金沢医療センター臨床研究部) |
研究代表者 |
西川 昌志 独立行政法人国立病院機構(金沢医療センター臨床研究部), その他部局等, 研究員 (90794511)
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研究分担者 |
岡田 光 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任准教授 (50788916)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 新規血管内皮細胞マーカー / 肝線維化 / 肝発がん |
研究実績の概要 |
肝細胞癌の発癌基盤となる肝線維化病態に対する治療薬は未だ存在しない。そのため、肝線維化への進行に対する治療薬の研究基盤の開発は急務である。申請者は、ヒト肝組織を用いたCpGメチル化網羅的解析から、発現プロモーター上のCpG islandに脱メチル化が生じ発現増加により肝線維化病態形成増悪に働く新規線維化因子TMEM164を同定した。C型肝炎ウイルスを排除したにも関わらず、肝発がんする原因の一つとして私たちは報告した(Cell Mol Gastroenterol Hepatol. 2023 May 3:S2352-345X(23)00060-7. doi: 10.1016/j.jcmgh.2023.04.006.)。近年増加している非アルコール性NAFLD/NASHに対してTMEM164はどのような影響があるかを検討した。肥満や脂肪肝モデルである60%高脂肪食、非アルコール性脂肪性肝炎モデルであるコリン欠乏食(CDAA)とメチオニン欠乏食(MCD)を投与したTmem164 KOマウスの肝組織は、予想外に、野生型と比較してインスリン感受性の低下、耐糖能の低下、脂肪の蓄積、肝線維化の増悪が見られた。Tmem164 KOマウスの皮下にマウス肝がん細胞株を移植させたところ、野生型マウスと比較して、腫瘍成長を有意に促した。Tmem164 KOマウスの皮下腫瘍は、CD31陽性の血管内皮細胞が多く、CD3, CD8, PD1陽性のT細胞が少ないことが観察された。このことから、Tmem164は肝がんの腫瘍成長を抑制する働きがあることが示唆された。今後、NASH形成時のTmem164 陽性クッパー細胞と肝がんの悪性度の増悪に伴うTmem164陽性血管内皮細胞に着目し、研究を続けていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インスリン抵抗性の原因の一つとして、Tmem164の発現抑制が肝組織内のマクロファージ/クッパー細胞の炎症惹起に働くことを突き止めた。マウス肝組織及び初代クッパー細胞を用いたWhole RNA-seq解析により、Tmem164がないとGeneXの発現が顕著に増加することを発見した。現在、Tmem164とGeneXとの関係性をin vitro, in vivoを用いて調べている。また、HCCの腫瘍の悪性度が高いほど、血管内皮のTmem164の発現が低値になることを10例のヒト肝がん由来CD31陽性血管内皮細胞から確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
NASH時におけるTmem164が欠損したマクロファージ/クッパー細胞は、IL6, IL1b, TNFの炎症反応を示しているところから、GeneXがどのように生理作用があるかを検討する。Tmem164 KO血管内皮細胞は、肝がんの腫瘍内で腫瘍免疫抑制に働く可能性を示した。肝がん細胞株と血管内皮細胞を共培養し、TMEM164の発現と相関する液性因子をプロテオーム解析し同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当コロナウイルス感染拡大による旅費の支出も少なかったため未使用額が発生したが、次年度の物品購入や旅費等に使用する。
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