研究課題/領域番号 |
21K07906
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 康雄 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (40422290)
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研究分担者 |
建石 良介 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50444089)
工藤 洋太郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90608358)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | HBV / HBx / ユビキチン化 |
研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)の増殖は既存の核酸アナログ製剤により抑制することが可能だが、HBVの肝細胞からの完全なる排除はいまだ不可能であり、新規抗ウイルス療法の開発は喫緊の課題である。本研究では、HBxにより分解されるウイルス増殖抑制因子の網羅的同定、またHBxの安定性を規定する宿主因子の網羅的同定を行うことにより、これら新たな分子を標的とした抗ウイルス療法の開発をめざす。 本年度は、HBxの安定性を規定する宿主因子の網羅的同定を試みた。2種類のアフィニティータグとTEVプロテアーゼによる切断部位を直列につないだ複合体型タグを組み込んだHBxの発現プラスミドを肝細胞株HepG2に導入し、タグに対する抗体を用いてHBx複合体を2段階精製し、HBx結合蛋白をゲルから切り出し質量分析計にてタンパクを同定した。 その中の一つにユビキチンリガーゼCHIP (Carboxyl-terminus of Hsc70 interacting protein)を認めた。CHIPとHBxは細胞内で結合し、CHIPを強制発現することによりHBxの発現量は減少した。一方でCHIPのK30A [Heat shock protein 70 (Hsp70)と結合しない変異体]及びH260Q(ユビキチンリガーゼの機能を喪失した変異体)では減少が認められなかった。CHIPをノックアウトした細胞ではHBxの安定性が増し、CHIPの強制発現によりHBxはユビキチン化を受けた。機能的には、HepG2-NTCP細胞でCHIPをノックアウトするとHBV感染時にHBV-RNAやHBVタンパクの産生が増加した。 以上よりCHIPはHsp70を介してHBxと結合し、HBxをユビキチン化している可能性が考えられた。CHIPはHBVの複製に関与している可能性が示唆され、本分子を標的にした抗HBV療法の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はHBxの安定性を規定する宿主因子の網羅的同定を行い、その中の一つのCHIPがHBV複製に寄与している可能性を示した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は昨年度同定した分子についてHBV複製の観点から機能解析を行う。
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