研究課題
研究代表者らは本研究計画において、以下の目的を設定した。すなわち、(1) TNFalpha下流で作用する炎症性調節制御分子を肝細胞特異的、及び間葉系細胞特異的に欠損させたマウスを用いて、胆汁うっ滞性肝障害・肝線維化を誘導し、肝線維化における機能的意義を解析する。(2) さらに、肝線維化の過程で本分子により調節される分子機構を明らかにする。これらのマウスより得られた知見を基盤に、(3)標的分子をゲノム編集したヒトiPS細胞株由来肝間葉系細胞(星細胞様細胞)を誘導し、標的分子が本細胞でも同様の機能を呈することを検証するとともに、独自に所有する慢性肝疾患データベースに基づく臨床検体を用いた検証解析を行う。これらの知見によって、抗線維化療法の新規標的分子の探索への貢献、及び将来的な肝臓再生医療の開発へ貢献することを、本計画の目的とした。今年度は下記の成果を得た。最初に炎症性調節制御分子を肝細胞特異的、及び間葉系細胞特異的に欠損させたマウスの樹立を進めた。目的とするマウスの樹立に成功するとともに、肝星細胞の90%で標的分子が欠損できていることが示された。次に本マウスの肝星細胞を用いたRNA sequenceを行い網羅的に標的分子を探索した。同様に、標的分子をゲノム編集したヒトiPS細胞株由来肝間葉系細胞(星細胞様細胞)の樹立を行うため、星細胞培養系の改善と効率化を図った。同様にヒトiPS細胞株由来肝細胞の誘導法について改善と効率化を図り、iPS肝細胞オルガノイドを誘導する方法の確立に成功した(第25回日本肝臓学会大会などで発表)。臨床情報データベースでの解析では、抗ウイルス療法に伴う肝細胞癌の再発との関連性を検証するメタ解析に参画し、その結果を発表した(Gut, 2022)。これらの結果を次の研究計画に反映させるべく、検討している。
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Journal of Gastroenterology
巻: 57 ページ: 120~132
10.1007/s00535-021-01845-5
Gut
巻: 71 ページ: 593~604
10.1136/gutjnl-2020-323663