研究課題/領域番号 |
21K07913
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
塩見 英之 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (40595485)
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研究分担者 |
増田 充弘 神戸大学, 医学研究科, 講師 (60512530)
児玉 裕三 神戸大学, 医学研究科, 教授 (80378687)
小林 隆 神戸大学, 医学研究科, 助教 (90709669)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オルガノイド / 膵癌 / 早期膵癌 / PanIN / ゼノグラフト / EUS-FNA / 膵管擦過細胞診 |
研究実績の概要 |
膵癌は極めて予後不良な癌であるが、早期に発見し切除する事により一定の予後が見込める事が明らかとなってきた。しかし実際の臨床現場において膵癌を早期に発見することは困難である。膵癌の発生と進展機構の解明は早期発見へ寄与することが期待されるが、正常から軽度異型病変、上皮内癌、進行癌までの各段階を模倣するようなヒトモデルは存在しない。我々は早期膵がんモデルとしてオルガノイド培養技術に着目した。オルガノイドは患者由来の細胞から元の組織をよく模倣した3次元細胞である。現在、使用可能な膵癌患者由来オルガノイドの大部分は主に膵癌手術検体から樹立されたものであった。一部、内視鏡検査の1つである超音波内視鏡下穿刺吸引法 (EUS-FNA)検体から樹立された膵癌オルガノイド細胞株も存在するが、いずれの膵癌オルガノイド株もいわゆる進行癌から作成されており膵癌の前癌段階を模倣しているモデルとは考えにくい。膵癌は膵管の上皮の異型である膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)から段階的に膵癌化する過程をとると考えられており、特に本研究では膵管の内腔側から細胞を採取できる膵管擦過細胞診から得られる検体からのオルガノイド樹立に着目して細胞採取を実施した。これまでに17検体の患者試料を用いてオルガノイド樹立を試みた。その内訳はEUS-FNA検体7例、膵管擦過細胞診検体8例、膵液検体3例である。そのうち擦過細胞診から樹立した1例では6カ月以上の長期培養に成功している。これまでに保存・蓄積しているしている膵癌患者由来オルガノイドも含めて今後DNAシーケンシングを実施し、トランスクリプトーム、プロテオーム解析を通じて早期膵癌オルガノイドを用いた早期膵癌から進行膵癌への腫瘍進展機構の解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は継続的に患者由来膵癌オルガノイド樹立しつつ以下の検討を行った。 (1)患者由来膵癌オルガノイド細胞株よりhematoxylin eosin染色を実施し、元の膵癌の手術標本と比較検討した。結果、オルガノイドは元の膵癌の組織構造をよく模倣したものであることが確認された (2)患者由来膵癌オルガノイドのうち比較的早期の膵癌から得られた細胞株では正常膵管、Low-grade PanIN、High-grade PanINの細胞形態をとるオルガノイドが確認された。 (3)患者由来膵癌オルガノイドから、膵液オルガノイド細胞株よりDNA、RNAを抽出し、KRAS、GNASのほか網羅的にIPMNの遺伝子変異解析ならび遺伝子発現解析を試みている
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、内視鏡検査で得られる余剰検体を用いて患者由来膵癌オルガノイドを樹立継続しつつ以下の研究を推進する。 (1)患者由来膵癌オルガノイドに免疫染色(TP53、SMAD4、CDKN2A、MUC2、MUC5AC等)を追加し、手術病理標本とのタンパク発現を比較する。 (2)患者由来膵癌オルガノイドからRNAを抽出し、トランスクリプトーム解析を実施することで、膵癌の各段階や膵癌の性質による特徴的な遺伝子発現の変化がないか検討する。 (3)患者由来膵癌オルガイドを免疫不全マウスに皮下移植・同所移植行い、生着率を評価する。生着した膵癌オルガノイドについては、さらに組織学的検討、トランスクリプトーム解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により学会等が延期・中止となり、計上していた旅費の使用がなかったため次年度使用が生じた。 これらの研究費は、内視鏡検査で得られる余剰検体を用いて患者由来膵癌オルガノイドの樹立を継続しつつ、DNAシーケンシングの実施や、トランスクリプトーム、プロテオーム解析を行うため、次年度に使用する計画である。
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