研究課題/領域番号 |
21K07918
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
上村 修司 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 准教授 (60448561)
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研究分担者 |
熊谷 公太郎 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (80626664)
田中 啓仁 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (90896127)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ディフェンシン / コピー数多型 / 炎症性腸疾患 |
研究実績の概要 |
近年,Defensin alpha (DEFA)1-3のコピー数多型(copy number variations: CNVs)が自己免疫疾患の発症リスクに関与していると報告されているが,DEFA1A3-CNVsと潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)との関連は不明のままである。本研究ではUC患者の末梢血単核球からDNAを抽出した後に,DEFA1A3-CNVsを測定し,UCの臨床的重症度との相関性を検討した。UC患者のDEFA1A3-CNVsは,3-16と幅広いコピー数を示しており,高コピー数(9以上)群は,低コピー数(8未満)群と比較し,有意に高い活動性を有したことのある症例が多かった。また,多変量解析ではDEFA1A3高コピー数が重症化を判定する独立した因子として示された。このことから,DEFA1A3-CNVsは,UCの重症度予測マーカーや治療予測マーカーとなる可能性が考えられた。また,高DEFA1A3コピー数患者は炎症エフェクター分子のヒト好中球ペプチド(HNPs)の高い分泌能を有しており,HNPsが腸管の炎症進展に深く関わっている可能性が予想された。 さらにHNPsの腸管炎症への分子生物学的機序を解明するため,DEFA1A3-HNPsトランスジェニック(Tg)マウスに実験腸炎を誘導したモデルを用い解析を行う予定である。現在,この腸炎モデルマウスから単離した腸管粘膜固有層単球細胞のサイトカイン発現量を解析しており,新規治療法の開発の基盤となりうる知見を蓄積中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DEFA1A3-CNVと炎症性腸疾患に関連性を解明する臨床研究の解析は終了した。Tgマウスも完成し,昨年度内にマウスのコピー数の検証も実施できた。本年度は腸炎モデルを作成し,その表現系の分析と,炎症に関わる機序の解明をすすめていく。
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今後の研究の推進方策 |
DEFA1A3-CNVとUCの臨床背景との関連性の解析はほぼ終了し,DEFA1A3コピー数とUC重症度が相関し,DEFA1A3の高コピー数を有する個体は高いHNPs産生能を有することを証明し論文発表を行った。研究テーマはロードマップにほぼ準じて進行しており,今後はDEFA1A3がコードするHNPsの腸管炎症の機能解析を実施する。Tgマウスは三系統作成できており,コピー数に依存した腸炎スコアリングの差やサイトカイン発現量の解析を継続していく予定である。さらに詳細な検討は細胞株等を用いて解析をすすめていく。
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