研究課題
炎症性腸疾患は長期の慢性炎症から発癌することが知られており、colitis-association cancer/dysplasia(CC/D)は生命予後にかかわる重篤な合併症でありその診断治療法確立は喫緊の課題である。申請者らは炎症性腸疾患からの発癌メカニズム解明と増殖抑制や新規光感受性物質を使用した悪性消化管腫瘍の光線力学診断法(Photodynamic diagnosis; PDD)・光線力学療法(Photodynamic therapy; PDT)について研究してきた。以上のことを踏まえ本研究の目的は5-aminolevulinic acid(5-ALA)を超える新規光感受性物質を使用したCC/DのPDD・PDTを確立し、臨床応用を目指すなかでCC/Dの生命予後改善に寄与することである。i)次世代光感受性物質(O-chlorin)を用いたCC/DへのPDD・PDTの新規有効性の確立ii)O-chlorinを超える次々世代光感受性物質の開発とCC/Dへの新たな展開ヒト潰瘍性大腸炎患者においても5-ALA使用したPDDをCC/D検出に使用した報告は認めるが、5-ALA経口投与で感度、特異度はそれぞれ、43%(95%CI; 0.17-0.69)、73%(95%CI; 0.44-0.83)と十分な結果ではなかった。炎症部位からも蛍光反応がでやすく偽陽性所見が多くなることが問題の一つであり、まだ実臨床で使用するには困難な状況である。本研究の目的は、長期UC患者に発生する視認不可能なCC/D病変を可視化するために、既存の5-ALAを使用したPDDに代わり新規糖鎖連結クロリンを使用したPDDによるCC/D検出率が上回ることを確認し、CC/Dの生命予後改善に寄与していくことである。
3: やや遅れている
我々のグループでは、5-ALAに代わり得る次世代の光感受性物質として糖鎖連結クロリンの開発と有用性を報告してきた。すなわち、Warburg効果による腫瘍取り込み増加を狙ったglucose鎖連結クロリン(G-chlorin)、癌細胞表面のみならず間質のTumor-associated macrophage(TAM)細胞にも取り込まれるmannose鎖連結クロリン(M-chlorin)、さらに水様性を高め腫瘍集積性向上と生体からの排出促進に有効であったoligosaccharide鎖連結クロリン(O- chlorin)であり、いずれも既存薬より腫瘍集積性の向上を認める。まずは細胞実験において大腸癌細胞を使用してO-chlorinの細胞内集積について解析できた。
O-chlorinは他の糖鎖連結クロリンに比べ、非常に水様性が改善された光感受性物質であり、各種癌細胞株及びヒト悪性腫瘍Xenograftモデルマウスにおいて、5-ALAと比べ7-23倍の強い蛍光強度を認めた。O-chlorin使用PDDは5-ALA使用PDDよりCC/Dの検出力を高める可能性がある。azoxymethane(AOM)及びdextran sodium sulfate(DSS)による刺激で炎症を母地として大腸癌を発症しCC/Dモデルとしてしばしば研究利用されている、AOM/DSSマウスモデルを使用した検討を今後予定している。
AOM/DSSマウスモデルを使用した検討を今回検討している。動物実験の開始が現在遅れており、翌年分として請求した助成金と合わせて今後、動物購入及び飼育費用等に費用を当てていく予定である。
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