研究課題/領域番号 |
21K07925
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
仁科 惣治 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70550961)
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研究分担者 |
日野 啓輔 川崎医科大学, 医学部, 特任研究員 (80228741)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 解糖系阻害剤 / 2DG / ナノ粒子 / PLGA / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
【2DG-PLGAナノ粒子(2DG-PLGA-NP)薬物動態解析の基盤確立】 質量分析法(LC/MS/MS)を用いたマウス血漿中の2-デオキシ-D-グルコース(2DG)濃度測定法を確立した(定量範囲:100~10000 ng/mL)。さらに、実際にマウスに対して 2DG-PLGA-NP 80mg/kg、週1回経静脈的投与を行った後に、血漿中 2DG濃度を測定した(2DG-PLGA-NP投与1, 3, 6, 24時間後)。その結果、投与後1, 3, 6時間後の 血漿中2DG濃度測定は可能であったが、24時間後は検出感度以下であった。 【2DG(原体)に対する2DG-PLGA-NPの腫瘍への薬剤(2DG)送達性における優位性評価】 2DG(原体)および2DG-PLGA-NP投与されたマウスの腫瘍組織に対して、質量分析法(LC/MS/MS)を用いた2DG および 2DG-6リン酸含有量測定を行った。腫瘍組織中の 2DG 含有量は測定感度以下であったが、2DG の代謝物である 2DG-6リン酸であれば測定可能ではないかと考えた。なぜなら、一般的にがん細胞内に到達した 2DG は 2DG-6リン酸に代謝されその状態で比較的安定化することが知られているためである。 そこでマウス腫瘍中 2DG-6リン酸含有量を測定した。全群において、週1回の尾静脈投与を2週(計3回)行い、最終投与24時間後に腫瘍サンプル採取した。その結果、用量(2DGとして8mg/kg)および用法(週1回の尾静脈投与)が同条件下では、2DG(原体)投与群 と比べて 2DG-PLGA-NP 群で腫瘍内 2DG-6-P 濃度が有意に高かったことを明らかにした(P<0.05)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度については「今後の研究の推進方策」の欄に記載したように、前年度に一部完了する予定であった【がん微小環境での解糖系阻害による抗腫瘍免疫活性化機構の統括的評価、及び血管新生阻害剤との併用効果の検討】の検討項目を全て完了すべく、検討を行っていく予定である。 その一方で、「研究実績の概要」に記載したように、【2DG-PLGAナノ粒子(2DG-PLGA-NP)薬物動態解析の基盤確立】および【2DG(原体)に対する2DG-PLGA-NPの腫瘍への薬剤(2DG)送達性における優位性評価】の検討項目が完了した。この2つの検討項目については、次年度で完了する予定であったため、研究全体の期間からみた前年度の進捗状況としては計画通り概ね順調に行われたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
【がん微小環境での解糖系阻害による抗腫瘍免疫活性化機構の統括的評価、及び血管新生阻害剤との併用効果の検討】 腫瘍血管内皮細胞の一部は腫瘍関連線維芽細胞(CAF)に形質転換される(血管内皮間葉転換;EndMT)。CAFはケモカインCCL2(MCP1)を分泌することによりがん組織へTAMを誘導促進し、腫瘍免疫逃避機構を形成する。そこで、グルコースが腫瘍血管内皮細胞から CAFへのEndMT誘導、およびTAM誘導性ケモカインCCL2分泌を促進するか否かを明らかにし、それに対し2DGが ①EndMT抑制作用、および ②CCL2分泌抑制→がん組織へのTAM誘導抑制を介した腫瘍免疫活性化 を来たすか否かを検証する。具体的には以下の項目で、非グルコース(control)群、およびグルコース±2DG 群での違いを検討する。 (1)血管内皮細胞株に対し、非グルコース及びグルコース±2DGを添加し培養後、血管内皮細胞における接着因子、EndMT関連マーカーおよびTAM誘導性ケモカイン(CCL2)の発現を検討し、血管内皮細胞からCAFへのEndMTを検討する。 (2)上記(1)の実験で用いた血管内皮細胞を回収しCCL2 mRNAを測定。リアルタイム細胞動態解析装置を用いて、上記(1)で得られた培養上清をchemoattractantとしてそれに対するマクロファージの遊走能を検討。さらに(1)で得られた培養上清でincubateされたマクロファージにおけるM1-like/M2-like formationへの形質転換も検討する。 また、肝発癌マウスを用いてCCL2、αSMA、VE-cadherin、M1/M2マクロファージマーカー発現に対して、2DG-PLGA-NPが及ぼす影響も検討する。 さらに、STAMマウスを用いて血管新生阻害剤(抗VEGF抗体)に対する2DG-PLGA-NPの併用効果を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に予定していた研究(【がん微小環境での解糖系阻害による抗腫瘍免疫活性化機構の統括的評価、及び血管新生阻害剤との併用効果の検討】)に使用する研究費用の一部を、次年度に計画する研究として使用するため。
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