研究課題/領域番号 |
21K07925
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
仁科 惣治 川崎医科大学, 医学部, 教授 (70550961)
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研究分担者 |
日野 啓輔 川崎医科大学, 医学部, 特任研究員 (80228741)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 解糖系阻害剤 / 2DG / ナノ粒子 / PLGA / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
【がん微小環境での解糖系阻害による抗腫瘍免疫活性化機構の統括的評価】 ・腫瘍血管内皮細胞の一部は腫瘍関連線維芽細胞(CAF)に形質転換される(血管内皮間葉転換;EndMT)。CAFはケモカインCCL2(MCP1)を分泌することによりがん組織へT腫瘍関連マクロファージ(TAM)を誘導促進し、腫瘍免疫逃避機構を形成する。そこで、グルコースが腫瘍血管内皮細胞から CAFへのEndMT誘導、およびTAM誘導性ケモカインCCL2分泌を促進するか否かを明らかにし、それに対し2DGが ①EndMT抑制作用、および ②CCL2分泌抑制→がん組織へのTAM誘導抑制を介した腫瘍免疫活性化 を来たすか否かを検証した。具体的には、血管内皮細胞株(EAhy)に対し、グルコース±2DGを添加し培養後、血管内皮細胞における接着因子、EndMT関連マーカーおよびTAM誘導性ケモカイン(CCL2)の発現を検討したが、2DGの投与で上記の蛋白発現は有意な変化を示さなかった。その実験において、2DGは血管内皮細胞の増殖を抑制することが分かり、2DGが直接的に腫瘍血管内皮細胞に作用し腫瘍血管新生を抑制する可能性が考えられた。 ・正常免疫能を有する肝発癌マウス[ジエチルニトロサミン(DEN)誘発肝癌マウス]の肝癌組織に対するWestern Blottingにて、2DG-PLGAナノ粒子投与により CD11b+ Myeloid cell(腫瘍免疫抑制系細胞であるM2 TAMもしくはMDSCに発現)の浸潤を抑制し、T2 TAMマーカー(CD63、Arg-1)およびCCL2(TAM誘導性ケモカイン)の腫瘍内発現することを見出した。以上より、2DG-PLGAは何らかの機序でCD11b+ Myeloid cellの浸潤を抑制し、それが肝細胞癌に対する抗腫瘍免疫活性化の一機序である可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に予定していた実験において、予想した通りの結果が得られなかったが、その際の実験結果として「2DGが直接的に血管内皮細胞の増殖を抑制することを明らかにし、2DGによる血管新生抑制抑制という新たな抗腫瘍効果の機序を見出した。 また、新たに正常免疫能を有する肝発癌マウス(DEN誘発肝発癌マウス)を用いる実験系を組んで、肝がん微小環境における腫瘍免疫抑制系細胞に対する2DG-PLGAナノ粒子の影響を評価したが、そのうちCD11b+ Myeloid cell(腫瘍免疫抑制系細胞であるM2 TAMもしくはMDSCに発現)の浸潤を抑制することを明らかにした。 以上より、当初計画していた内容とは一部異なる研究内容たが、新たな作用機序の解明がされたこともあり、研究全体の期間からみた前年度の進捗状況としては概ね順調に行われたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
近年、がん細胞において解糖系最終産物として産生された乳酸が腫瘍免疫逃避機構に関与することも注目されている。さらに、がん微小環境において、腫瘍免疫活性化にかかわる effector Tcell(CD8+Tcell)と腫瘍免疫抑制系細胞である制御性 Tcell(Treg)における免疫チェックポイント分子 PD-1 の発現バランスは、乳酸により調節されており、そのことが免疫チェックポイント阻害剤に対する反応性に関与することが明らかにされた(Cancer Cell 2022; 40: 201-218)。そこで次年度は、高グルコースの存在下でがん細胞の乳酸産生を介して“CD8+Tcell/TregのPD-1発現調節機構”に変調を来し、結果としてICI(抗PD-1/PD-L1抗体)治療抵抗性を亢進させるか否かについて、正常免疫能を有する肝発癌マウス(DEN誘発肝発癌マウス)を用いてその一端を明らかにする。
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