研究課題/領域番号 |
21K07927
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
森本 景之 産業医科大学, 医学部, 教授 (30335806)
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研究分担者 |
馬場 良子 産業医科大学, 医学部, 准教授 (90271436)
中村 健太 産業医科大学, 医学部, 修練指導医 (60789692)
國分 啓司 産業医科大学, 医学部, 助教 (00432740)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PKR / タンパク質相互作用 / 小腸上皮 / インフラマソーム |
研究実績の概要 |
これまでの研究で免疫関連因子PKR(double-stranded RNA-dependent protein kinase)が細胞膜のactin分解を抑制し、自然免疫としてウイルス侵入防御に寄与することが明らかとなった。本申請は、PKRによる細胞防御機構のさらなる解明を目的とし、炎症の要となるタンパク質複合体“インフラマソーム”を解析する。具体的には、細胞内タンパク質結合検出法や腸管上皮オルガノイドを用い、NLRP3インフラマソームの広範囲な外部刺激への応答とPKRとの関連について①小腸上皮細胞におけるPKR, gelsolinとNLRP3との相互作用、②PKR変異に伴うインフラマソーム活性化への影響、③小腸上皮オルガノイドを用い、PKR変異による炎症惹起への影響の3観点から解析する。 本年度は、以下の成果を得た。 1.マウス小腸組織におけるPKRおよびgelsolin、NLRP3について免疫組織化学およびin situハイブリダイゼーションを用いて、それぞれの組織上での発現部位を同定した。 2.培養小腸上皮細胞に発現したPKRは合成2本鎖RNAを検知し、細胞にApoptosis, Necroptosis, Paraptosisの3種類の細胞死を誘導した。 3. 3%デキストラン硫酸ナトリウム投与による腸炎モデルマウスを作製し、炎症時及び炎症回復時におけるPKRおよびgelsolin、NLRP3の発現を解析し、腸管の部位による回復過程の違いおよび細胞増殖とPKR発現の相関を明らかとした。これらの結果の一部は日本顕微鏡学会において報告を行った。PKRとその結合タンパク質が小腸上皮において果たす役割の検討を重ねており、インフラマソームとPKRとの関連の可能性を示す結果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インフラマソーム活性化におけるPKRとgelsolinの役割を解明するために、以下の4項目について解析を行う計画である。①上皮細胞内におけるPKR/gelsolin, NLRP3の相互作用を解析する。②変異型PKR発現細胞株を樹立し、インフラマソーム活性化に与える影響を解明する。③腸炎モデルマウスにおけるPKR, gelsolin, NLRP3の発現を調べ、インフラマソーム活性化と相互作用の関連を明らかにする。④腸炎モデルマウスより小腸上皮オルガノイドを作製、変異型PKRの遺伝子導入により、炎症抑制効果を調べ、腸炎に対するPKRの影響を明らかにする。 現在、上記4項目のうち項目3と項目1の半分が解析終了している。また導入用の遺伝子、タンパク質相互作用の評価システム、および小腸オルガノイド培養系の樹立などを達成することができた。これらにより、十分に物質的、技術的な準備を整えることができたと考えている。しかしながら、in situハイブリダイゼーションの特異性が悪く、市販の検出システムへ変更したこと、およびエレクトロポレーターによる遺伝子導入をアデノ随伴ウイルスによる遺伝子導入へと手法変更したことにより、計画には遅れが生じた。そのため、やや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は作製したプラスミドを用いて変異細胞を樹立し、検証した抗体、in-situプローブを用いて、形態学的な評価およびインフラマソームの活性化評価システムの構築に取り組む予定である。今年度の実験結果、実験計画に一部遅延した項目が生じているが、全体の実験を進める上で支障はなく、研究計画自体の変更については予定していない。オルガノイドを用いた変異導入実験については時間を要する研究項目でもあるため、引き続き、研究協力者の協力を得ながら進めて行く。研究の推進方策として、今年度準備が整った物質的・技術的な環境を用いて、引き続き、本研究の目的のうち、①小腸上皮細胞におけるPKR, gelsolinとNLRP3との相互作用、②PKR変異に伴うインフラマソーム活性化への影響の2項目について研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
in situハイブリダイゼーションのシステムを市販のものへ変更し、遺伝子導入をエレクトロポレーターからアデノ随伴ウイルスによる遺伝子導入へと手法変更した。これらの変更過程で、反応条件等の検討が時間を要したために腸炎モデルマウスやオルガノイドを使った解析はあまり進捗せず、結果として予算残となった。今年度、システム変更等は終了しているため、次年度は計画通りに実験の試薬等の購入に使用する予定である。
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