研究実績の概要 |
これまでの研究で2本鎖RNA依存性キナーゼPKRがactin分解を抑制し、自然免疫としてウイルス侵入防御に寄与することが明らかとなった。本申請は、PKRによる細胞防御機構のさらなる解明を目的とし、インフラマソームとの関連を解析する。細胞内タンパク質結合検出法や腸管上皮オルガノイドを用いNLRP3インフラマソームの応答とPKRとの関連について、①消化管上皮細胞におけるPKR, gelsolin(GSN)とNLRP3との相互作用、②PKR変異に伴うインフラマソーム活性化への影響、③器官培養小腸を用いたPKR変異による炎症惹起への影響について調べ、本年度、以下の成果を得た。 1.3%デキストラン硫酸ナトリウム投与により腸炎モデルマウスを作製した。炎症期および炎症回復期大腸におけるPKRとGSN, NLRP3, eIF-2について、免疫組織化学および、in situ hybridization を行った結果、回復過程の大腸において、PKRと活性型eIF-2の発現に相関があることを明らかとした。 2.合成2本鎖RNA(poly I:C)によって小腸上皮細胞に生じる細胞死(Apoptosis, Necroptosis, Paraptosis)について、各種阻害剤を用いて実験を行った結果、インフラマソームが関与するNecroptosisが優勢であることを明らかとした。 3.アデノ随伴ウイルスを用いて、変異型PKR遺伝子導入系を立ち上げた。当該ウイルスをマウス小腸上皮オルガノイドに感染させた結果、陰窩の出現に影響が生じることを明らかとした。 以上のように、PKRとその結合タンパク質が消化管上皮で果たす役割として、腸管上皮細胞の分化やインフラマソームを介した細胞死との関連を示す結果を得た。これらの結果は日本顕微鏡学会において報告を行い、一部の結果は論文投稿中および投稿準備の段階である。
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