研究課題/領域番号 |
21K07929
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
藤谷 幹浩 旭川医科大学, 医学部, 教授 (80322915)
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研究分担者 |
嘉島 伸 旭川医科大学, 医学部, 助教 (10548655)
小西 弘晃 旭川医科大学, 医学部, 客員助教 (30777181)
澤田 康司 旭川医科大学, 医学部, 講師 (80548660)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 非アルコール性脂肪性肝疾患 / アレルギー性皮膚炎 / プロバイオティクス |
研究実績の概要 |
(1)遠隔臓器の疾患に有効なプロバイオティクス由来活性分子の同定 2021年度はLactobacillus brevisの死菌による肝細胞の脂肪酸蓄積減少効果を証明し、この作用は腸管上皮から分泌される何らかの活性分子を介して発揮される可能性を示した。2022年度は、乳酸酸性菌由来分子による皮膚障害改善効果について検討した。腸管上皮細胞を上段に、ヒト表皮由来HacaT細胞あるいはマクロファージ様分化THP-1細胞を下段に培養したトランスウェルを作製した。このトランスウェルの上段に乳酸酸性菌由来分子Aを添加し、下段に炎症惹起分子を添加して、HacaT細胞およびマクロファージ様分化THP-1細胞の炎症関連分子発現を検討した。その結果、乳酸酸性菌由来分子A投与により、HacaT細胞およびマクロファージ様分化THP-1細胞の炎症関連分子発現が有意に減少した。また、上段に腸管上皮細胞を培養しなかった場合には、この効果は認められなかった。 (2)プロバイオティクス由来分子の標的腸管細胞への作用、遠隔臓器の障害改善機序 2021年度は高脂肪餌マウスモデルにてLactobacillus brevis死菌由来分子の経口投与が、肝細胞におけるインスリン感受性を変化させ、脂肪沈着を減少させる可能性を示した。2022年度は、乳酸酸性菌由来分子Aによる皮膚障害改善作用をin vivoで検討した。hapten 2,4 dinitrofluorobenzene (DNFB)をマウス皮膚に塗布しハプテン誘導皮膚障害マウスモデルを作成した。乳酸酸性菌由来分子Aを経口投与した結果、皮膚の肉眼的、組織学的障害は有意に改善した。また、皮膚における炎症関連分子の発現も有意に減少した。(1)の結果も含め、乳酸酸性菌由来分子Aによる皮膚障害改善効果は腸管上皮からのセカンドメッセンジャーを介して発揮される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)遠隔臓器の疾患に有効なプロバイオティクス由来活性分子の同定 2021年度には、腸管上皮(上段)と肝細胞(下段)を培養したトランスウェルを用いて肝細胞の脂肪沈着を検討した。各種プロバイオティクスの培養上清および死菌混濁液を添加した結果、Lactobacillus brevisの死菌懸濁液によって肝細胞の脂肪沈着が有意に改善することを明らかにした。2022年度には、腸管上皮細胞を上段に、ヒト表皮由来HacaT細胞あるいはマクロファージ様分化THP-1細胞を下段に培養したトランスウェルを用いて皮膚障害改善効果を検討した。乳酸酸性菌由来分子を添加した結果、HacaT細胞およびマクロファージ様分化THP-1細胞の炎症関連分子発現が有意に減少することを明らかにした。以上の成果から、本研究事項は当初の予定通り進捗していると考えられる。 (2)プロバイオティクス由来分子の標的腸管細胞への作用、遠隔臓器の障害改善機序2021年度には、NAFLDのモデルである長期高脂肪食餌接種マウスに対して、Lactobacillus brevis死菌混入高脂肪餌を投与した結果、通常の高脂肪食よりも肝細胞の脂肪沈着が有意に減少すること、その機序にインスリン関連分子の発現変化が関与していることを明らかにした。2022年度には、ハプテン誘導皮膚障害マウスモデルを作成し、乳酸酸性菌由来分子Aを経口投与した結果、皮膚の肉眼的、組織学的障害は有意に改善すること、その機序には皮膚の炎症関連分子の発現の減少が関与することを明らかにした。この成果から、本研究項目は当初の予定通り進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、トランスウエルを用いたin vitroモデルおよび疾患マウスモデルを用いて、乳酸酸性菌の死菌や菌由来分子による肝細胞脂肪蓄積抑制効果や皮膚障害改善効果を証明し、これらの作用は腸管上皮からのセカンドメッセンジャーを介して発揮される可能性を明らかにしてきた。これらの新しい知見をもとに、今後はこれらの腸管上皮セカンドメッセンジャーの同定や分泌機序の解明、標的となる遠隔細胞におけるセカンドメッセンジャーの認識機構と細胞内情報伝達系の同定などの作用機序解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度内に購入予定であった一部の消耗品が年度内の納入されなかったため、2023年度へと持ち越された。この未使用額については、2023年度の消耗品納入の際にその費用として支払う予定である。
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