研究実績の概要 |
約30症例でクローン病患者由来のオルガノイドの樹立に成功した。単層培養を用いた抵抗値の検証には、安定的、かつ再現性のある実験系の構築が望まれるため、まずは条件設定を行った。Millicell電気抵抗値測定システムを用いて単層培養のTEERを測定したところ、経時的にTEERは上昇し、樹立3日後はTEER:200Ωcm2程度だったものが、5日目では400Ω cm2、10日後は1000Ωcm2、17日目で1400Ωcm2程度のピークとなり、以降細胞の死滅とともにTEERの低下を確認できた。樹立後10日が最も検証に適した状態と判断した。その後、様々な因子によりTEERが変動するかどうかを検証した。まずは、腸内細菌をターゲットとし、LPS(1ng/ml)の負荷を試みた。LPS負荷とコントロールには電気抵抗値に差を認めず、LPSはクローン病上皮の粘膜電気抵抗値に関与しないことを明らかとした。次に、TNFα、およびインターフェロンの負荷を行った。24時間負荷することで、抵抗値はコントロールと比較して約40%まで低下することが明らかとなり、IBD関連の炎症性サイトカインが、腸管上皮細胞の粘膜電気抵抗の低下を惹起することがあきらかとされた。次に、RAP1A遺伝子多型のタイトジャンクションの機能解析を施行した。大腸、小腸オルガノイドどちらにおいても、RAP1Aリスクアレル別(AA,TA.TT)ではタイトジャンクションの抵抗値に差は認めなかった。RAP1A阻害剤であるGGTI298を用いてRAP1Aの機能を抑制したが、それぞれで有意差は認めなかった。上皮オルガノイドにおけるタイトジャンクションはTNFαによる炎症性サイトカインによる影響が大きと推定された。
|