研究課題/領域番号 |
21K07933
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岡田 浩介 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80757526)
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研究分担者 |
有泉 俊一 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (40277158)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 客員教授 (90241827)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NASH / p62 / LC3 / autophagy / lipophagy / 脂肪酸 |
研究実績の概要 |
肝細胞特異的p62レスキューマウスでは,p62-KO,脂肪細胞特異的p62レスキューマウス,マクロファージ特異的p62レスキューマウスと比較して,NASHの進行が軽減することを昨年報告した.肝組織の解析では,中性脂肪および全体の脂肪酸含有量は,4系統のマウスの間で大きな変化を認めなかったものの,脂肪酸のうちpalmitic acid(PL)とoleic acid(OL)の分画が,p62-KO と比較してp62-H resでは抑制されていた. 培養肝細胞(Hepa1-6)を用いた解析では,PL,OLいずれの脂肪酸の暴露によっても野生型細胞(WT)ではp62タンパク発現の増加が認められた.また,WTと比較してp62をノックアウトした細胞(p62-KO)では,lipophagyに関わるLC3の基礎発現が増加し,更にPLおよびOLの暴露によるLC3発現の増加が顕著であり,p62の欠失によりautophagy/lipophagyの障害が惹起されている可能性が示唆された. ヒト肝臓標本を用いてLC3Aの免疫組織学的解析を行った.LC3Aは,NASHおよび慢性C型肝炎の非癌部で発現が低下しており,その発現と染色局在の変化は,病理学的な肝炎症および線維化と有意な相関が認められた.また,LC3Aの細胞質外への局在変化は,血小板数およびPT%など,肝予備能と相関を認めた.一方,LC3Aの発現強度および局在は,癌の病理学的な悪性度やT因子,腫瘍マーカーなどと関連は認められなかった. P62に加え,LC3Aの発現や局在が,肝炎症,線維化や肝予備能と関連する本研究の結果より,autophagy障害が肝炎と肝硬変の進展に関与し,肝癌の発症につながる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変動物の実験は,動物の繁殖・供給はほぼ計画通りに進行し,高脂肪食の摂餌も終了した.NASHのphenotypeの変化については,肝病理,血液生化学,肝組織のqPCRなど順調に解析が終了している. 細胞実験については,CRISPR/CAS9を用いてp62をノックダウンした培養幹細胞を作成し,実験に供した.これらの細胞を用いてautophagy/lipophagyに関わる因子の発現と,脂肪酸の暴露による変化を解析した.実験条件を確定し,実験計を構築することに成功し,実験は問題なく進捗した. ヒト肝臓標本を用いた研究では,P62,LC3Aの免疫組織学的解析がほぼ完了した.臨床情報の収集も完了した.P62とLC3Aについて,その局在に着目した解析,それらの発現の相関関係を更に詳細に解析を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子改変動物の今後の実験については,脂肪酸代謝に関わる因子の発現について,qPCR, Immunoblotなどによって,更に解析を行っていく.また,それと並行して,RNA-seqによる網羅的な解析も検討している. 細胞実験については,p62の遺伝子発現の差によって生じたautophagy/lipophagyに関与する因子の変化が,脂肪酸代謝とどのように関与しているのか,特に小胞体ストレスとそれによって生じる異常タンパクの消去との関与に着目して研究を継続する. ヒト肝臓標本を用いた研究では,今後P62とLC3Aの関連に着目した解析,更に,autophagyと並んでタンパク分解に関与するmulti-ubiquitinなどに着目して免疫組織学的解析を追加し,更なる解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
使用を予定していた遺伝子改変マウスの実験計画が順調に進行したため,2022年度に使用予定だった高脂肪食,飼育費に余剰が生じた. これらの助成金は,2023年度に網羅的遺伝子解析(RNA-seq)およびヒト臨床標本の免疫組織学的解析(multi-ubiquitin)に充てる予定である.
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