研究課題/領域番号 |
21K07934
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
関 元昭 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (70714278)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | EBウイルス胃癌 |
研究実績の概要 |
胃癌のサブグループであるEpstein-Barrウイルス陽性胃癌(EBV胃癌)は、EBウイルスへの感染と、それに続くDNAメチル化によって癌抑制遺伝子が不活性化され発癌に至る。しかし、上皮細胞へのウイルス感染から発癌至るエピゲノム制御は明らかではない。申請者らは、EBウイルス感染細胞が細胞老化様の表現型を示すことを観察したことから、EBV感染によって細胞老化が惹起されており、老化を回避する細胞が癌化に至るとの仮説を立てた。そこで本研究ではEBV胃癌発癌の分子メカニズムを明らかにするために、EBウイルス感染細胞を表現型に基づいて分取し、遺伝子発現解析、DNAメチル化解析から発癌ドライバー遺伝子を同定する。 まず、EBウイルス感染細胞において細胞老化が誘導されるか検討した。EBウイルスを感染させた胃癌細胞株および正常胃粘膜上皮細胞株において酸性ガラクトシダーゼ活性の検出を行い、細胞老化様の表現型観察を試みた。しかし、EBウイルス感染によるガラクトシダーゼ陽性細胞の増加は見られなかった。次に、細胞核を染色後、セルソーターを用いて細胞核の大きさ毎に細胞を分取し、その増殖速度を観察したが、有意な差異は見いだせなかった。そのため、一般的な細胞老化とは異なるメカニズムで増殖抑制が生じていると考えられた。今後、改めてEBウイルス感染による、細胞表現型への影響を探索し、それらの原因について解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸性β-ガラクトシダーゼ活性測定において有意な老化の誘導は観察されなかった。また、細胞核を染色後、セルソーターを用いて細胞核の大きさ毎に細胞を分取し、その増殖速度を観察したが、有意な差異は見いだせなかった。 そこで、新たに、EBウイルス感染後に、細胞間の不均一性に由来する表現型を探索することにした。ピューロマイシン耐性遺伝子の下流にランダムな配列のDNAバーコードをクローニングし、転写型DNAバーコードライブラリを作成した。これを用いてレンチウイルスを作成し、GES1細胞に感染させ、DNAバーコードを発現するGES1細胞を樹立した。
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今後の研究の推進方策 |
樹立したDNAバーコード発現型GES1細胞を用いて、EBウイルス感染実験を行う。陰性コントロールとして、薬剤耐性遺伝子のみを発現するプラスミドをトランスフェクションした細胞も準備する。EBウイルス感染もしくはプラスミド導入の4週間後に細胞からゲノムDNAを回収し、DNAバーコード配列をシークエンサーで解読する。両者での集団の割合が類似していれば、EBウイルス感染は確率論的に発生する事象であると考えられ、また、異なるバーコードの濃縮が見られた場合は、細胞間あるいはクローン間での何らかのバイアスが予想される。バイアスの存在が示唆された場合には、その原因解明のため、一細胞解析等を検討する。
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