研究課題
基盤研究(C)
本研究では、胃の粘膜上皮細胞へのEpstein-Barrウイルス感染から胃癌の発生に至る分子メカニズムを検討した。EBウイルス感染細胞において細胞老化は誘導されなかったが、DNAバーコードによって細胞系譜を追跡した結果、特定のサブクローンが感染後に濃縮していた。シングルセル解析から元の細胞集団が3つに分かれており、そのうちの1つにEBV感染後の濃縮サブクローンが含まれており、さらにこの細胞集団を特徴付けるマーカー遺伝子を抽出することができた。
分子生物学
本研究から、均質に見える胃正常細胞においても不均一性が存在し、EBウイルスの感染・維持に有利な細胞集団の存在が示唆された。どの細胞がEBウイルスに感染するのかについてはこれまで不明であったが、そのマーカーとなりうる遺伝子を抽出できたことは発癌機構を明らかにする上で有益である。90%以上の成人がEBウイルスに感染しているとされるが、今後、易感染性細胞の性質を明らかにすることで、胃癌発症のリスクを抑える予防法の開発が進むと期待される。