研究課題/領域番号 |
21K07935
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
木暮 宏史 日本大学, 医学部, 教授 (60568921)
|
研究分担者 |
立石 敬介 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (20396948)
工藤 洋太郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90608358)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 肝内胆管癌 |
研究実績の概要 |
癌に対する分子標的薬の有効性の分子基盤として、その癌細胞におけるoncogene addiction を標的化している点がある。難治癌のひとつ肝内胆管癌(ICC)ではIDH1やFGFRなど、標的となりうるゲノム異常が限られており、ICC細胞がaddictする分子機構の包括的解明が望まれている。前研究である「肝内胆管癌ICCにおけるIDH変異の生物学的意義の統合的解析」において、IDH1変異が解糖系遺伝子PFK1の発現上昇を司ること、IDH1変異はICCにおいてBET阻害剤JQ1への感受性を増加させることを報告した。しかしながら様々な癌ではBET阻害剤の効果がc-MYCをはじめとする癌遺伝子の発現低下に依存すると報告される一方、ICCではその機構が再現されず、BET阻害の標的遺伝子は不明であった。 ICCにはIDH以外にクロマチンリモデリングに関与する変異が見出される。さらにはIDH変異がクロマクロマチン動態を含めたエピゲノム制御は、ヒトの細胞が慢性的な環境応答に対する合目的的な遺伝子発現を誘導・確立する可能性もある。ICCにおいても膵癌と同様に豊富な間質から成る特徴的な微小環境を有するため、間質から慢性的な刺激を受ける過程で、その外部刺激を生存・増殖にリンクさせ、ICC細胞がaddictするような、重要で特異的なエピゲノム変化が誘導されている可能性がありうる。 よって本研究では、主に肝腫瘍の発生に焦点を当て、ICC特異的なクロマチン構造とその腫瘍生物学的意義を解析し、さらにIDH変異と協調する遺伝子異常についても調査する。この研究は、肝腫瘍発生におけるIDH変異の役割を深く理解するために、ヒト由来のオルガノイドおよびオリジナルの遺伝子改変マウスを使用して、包括的な解析を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ICC変異を有する遺伝子改変モデルマウスを樹立することができ、肝特異的な生物学的および分子学的解析が可能となっており、研究はおおむね順調に進捗しているが、今年度に予定していた出張を遅らせて次年度としたため。
|
今後の研究の推進方策 |
IDH変異モデルマウスおよび様々なクロマチン修飾分子の遺伝子改変マウスを樹立し、ICC発生におけるこれらの相互関連性を示唆する初期の知見を得ている。さらに、その肝病変の解析を進めている。今後は、ヒトオルガノイドから得られる知見と、これらのマウスモデルからの解析データを比較統合し、分子学的および生物学的に包括的な検討を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、国内外の学会での発表を目的とした出張を取りやめたため、次年度使用額が生じた。次年度は、学会参加のための出張旅費、論文投稿料、および掲載料として使用する予定である。
|