研究課題/領域番号 |
21K07939
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
北畑 富貴子 (河合富貴子) 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 助教 (00755580)
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研究分担者 |
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30372444)
岡本 隆一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50451935)
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研究期間 (年度) |
2022-02-01 – 2025-03-31
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キーワード | 機械学習 / 癌微小環境 / 空間的多様性 / HBV integration / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、独自に確立してきた学術・技術基盤に基づき、以下の目的を設定した。(1) 肝癌ゲノム情報と癌微小環境の空間的多様性の機械学習による臨床予測モデルの構築、 (2) ヒトiPS細胞由来多細胞肝臓オルガノイドの開発と微小環境と病態形成に関わる細胞連関解析から肝癌の臨床病態を数理学的に予測かつ細胞生物学的に証明することを目的とし、今年度の実績として下記を得た。 (1)HBV陽性肝細胞癌において格子モデルと混合モデルを用いて新規にHBV DNA integrationが生じるシミュレーションを行った結果、1つのintegration siteを持つ細胞がモノクローナルに格子全体を占有する条件およびいくつかの細胞が格子に点在する条件が明らかとなった。空間構造がintegration siteの多様性を保つことに寄与することが示唆されると同時に実際に観測されたHBV DNA integration siteの分布の一部を再現し得た。 (2)HBV integrationのみを有するiPS細胞と、上記1により解析された微小環境の空間的多様性と発癌に関連すると抽出された遺伝子変異群との形質の違いを解析する検討を進めた。今年度はゲノム編集により標的遺伝子を改変したヒトiPS細胞のうち増殖亢進を認めた細胞を用いて、発癌病態の一部を再現しうる肝疾患病態解析モデルを構築した。標的領域へHBVゲノムをknock inした新規のヒトiPS細胞株を樹立し、肝細胞系譜に誘導した増殖能が高い疾患モデル型細胞株ではepigeneticな解析においても細胞周期関連遺伝子群の発現が有意に高いことが明らかとなり、肝発癌病態の一部が再現された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画は(1) 肝癌ゲノム情報と癌微小環境の空間的多様性の機械学習による臨床予測モデルの構築、 (2) ヒトiPS細胞由来多細胞肝臓オルガノイドの開発と微小環境と病態形成に関わる細胞連関解析の2段階で進行させる計画であるが、現時点まで順調に進捗していると考えられる。 (1)肝癌ゲノム情報と癌微小環境の空間的多様性の機械学習による臨床予測モデルの構築については当初の計画通り進めることができた。すなわち、癌微小環境の空間的多様性のシミュレーションモデルが実際に観測されたHBV DNA integration siteの分布を説明することが可能か検証し、HBV integrationが新規に生じる場合においても空間構造がintegration siteの多様性や増殖能に関わることが明らかになり、格子モデルで新規site出現頻度が低い場合が概ねモノクローナルで稀に多数のsiteが観察される条件に合うと考えられた。現在の解析を進めることでHBV感染の肝発癌機構予測の一端を解明し得ると考えられる。 (2)昨年度にひきつづき、肝癌におけるゲノムの病態を再現した結果、増殖亢進を認めたHBVゲノムインテグレーションiPS細胞由来肝系譜細胞の解析を行った。 網羅的な遺伝子発現解析に加え、epigeneticな網羅的解析を追加することで、細胞周期関連遺伝子群において有意に発現が亢進していることが明確となり、実際サイクリンなど蛋白レベルでも亢進していることを見出した。異常な増殖という肝発癌病態の更なるメカニズムの解析を遂行しており、これらの解析結果を論文として投稿中である。 以上のように、研究計画は順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
前項に記した各段階で研究を推進していく。 (1)肝癌ゲノム情報と癌微小環境の空間的多様性の機械学習による臨床予測モデルの構築:癌微小環境の空間的多様性のシミュレーションを引き続き行い、実際の病態との関連を評価していく。また、Whole slide imageから数値化した病理画像データはtransitivityにて画像に映っている構造を解析中であり、今後HBV integrationとの関連について機械学習を行う。得られた画像および遺伝子変異、HBV integration、臨床データから癌の生物学的悪性度を推定し、癌進展や治療抵抗性等の臨床病態を予測可能なアルゴリズムを構築することを目指す。 (2)ヒトiPS細胞由来多細胞肝臓オルガノイドの開発と微小環境と病態形成に関わる細胞連関解析:標的領域へHBVゲノムをknock inすることによって新規のヒトiPS細胞株を樹立、肝細胞系譜に誘導して、前駆細胞レベルでの増殖能を比較検討し、その分子機構の詳細を明らかにする。これらの結果に関して、上記1により解析された微小環境の空間的多様性と発癌に関連すると抽出された遺伝子変異群との形質の違いを解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由: 試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため、廉価な物品を選択して購入したため。 使用計画:検討する数・種類を拡大して解析を発展させて行うため、当初の計画よりも試薬を増量して購入する予定である。
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