マウス代謝性脂肪性肝疾患モデルにおける腸管TAS1R3の役割の検討 Cre-loxPシステムにより腸管上皮特異的Tas1r3欠損マウス(Tas1r3fl/fl;Villin-creTg/-;(Tas1r3ΔIEC))を作製し、対照マウスとしてTas1r3fl/fl;Villin-cre-/-;(WT)を用いて下記実験を行った。Tas1r3ΔIEC群とWT群のそれぞれに対し、通常食(control)群とhigh-fat+high-cholesterol食(HFCD)群の計4群に分け、8週間給餌後に解析した。脂肪肝進展の評価は、HE染色によるNAFLD activity score (NAS)にて肝組織の炎症や線維化の程度を算出した。また肝臓中の中性脂肪(TG)含有量を測定した。さらに、肝臓での脂肪酸代謝に関わる分子の発現をWestern blotting法やqPCR法を用いて解析した。実験結果は、WT HFCD群に比してTas1r3ΔIEC HFCD群では脂肪滴の沈着の減少を認め、TG含有量も低値であった。また、WT control群と比較しWT HFCD群において発現が増加したCYP2E1およびAlox15 mRNAの発現が、Tas1r3ΔIEC HFCD群で低下傾向であった。 マウス腸炎モデルにおける腸管TAS1R3の役割の検討 腸管上皮特異的Tas1r3欠損マウス(Tas1r3ΔIEC)の腸炎の表現型を評価したが、自然発症小腸炎・大腸炎は認めなかった。そこで、Tas1r3ΔIECと野生型マウスにDSSやインドメタシンを用いた薬剤誘発腸炎モデルを作成した。評価方法として、体重変化・HE染色での腸炎の重症度、炎症性サイトカインの発現をqPCRなどで評価した。DSS自由飲水による大腸炎モデルでは、体重変化や大腸炎の重症度などに、WTとTas1r3ΔIECの間で差は認めなかった。一方、インドメタシン誘発小腸炎モデルでは、WTに比較してTas1r3ΔIECの方が、小腸炎の組織学的炎症が軽度である傾向と、炎症性サイトカイン発現が低値である傾向を認めた。
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